不器用な彼女 第9話
「…さん…?」
「……ちゃん、具合悪いの?大丈夫?」
「いっ、いや!全然なんともないぞ!!」
それまでボーっとした状態で何度も鶏の唐揚げを掴んではポロリと落とし、
また掴んでは落としを繰り返していたは、周りの友人たちの言葉で我に返った。
GW前の出来事から既に2週間ほど経っているのに、何故かその時から思考が止まっているような気がしている。
授業中やサークルで泳いでいる時は忘れるのだが、ふと休み時間や暇な時間になると匡のことを考えてしまうのだった。
「まだ風邪、完全に治ってないんじゃない? 調子が悪い時くらいサークル休みなよ?」
斜め前に座っている匡が首を少し傾けながら声をかけてきたのを見ては思わず言葉が出せずに、首だけ勢いよく何度も上下に動かした。
そんな自分はやはりいつも以上に変だと思う。
時折「はぁ」と無意識にため息をつきながら黙々と食事を済まして箸を置き、はトレイを持って立ち上がった。
そんな彼女に緑は心配そうな顔を見せ、返却口の前で呼び止める。
「さん、俺でよければ話聞くから…」
「……高田くん」
入学後のゼミで隣の席だったことから知り合い、それ以来、ずっと傍にいてくれた緑。
男友達もいるのに、常に隣の席で授業を受けたり、食事に誘ってくれる彼は
恐らく独りぼっちで何もかもに不器用な自分の為に一緒にいてくれるのだろう。
この1年で気づいた彼の何気ない優しさに日々感謝していたが、また彼に助けられてしまった。
何てありがたい人なのだろう――とはそれまでの俯いていた顔を上げて緑に笑顔で礼を言う。
「ありがとう。高田くんになら何でも話せそうだ」
「うん、遠慮せずにいつでもどーぞ」
そんな彼女に彼もいつもの穏やかな笑顔を向ける。
その2人よりも早くトレイを返し終わり、彼らを少し遠くから見ていた夏香と匡も微笑んでいた。
「ちゃんって高田くんの前だと肩の力抜いて笑ってるよね。 …なんか嬉しいな」
「……そういえば、そうかも…」
これまでのことを考えてから、匡は少し複雑な表情をして頷く。
「緑は結構、一緒にいるもんなぁ…」
「あら、蒼井くん。ヤキモチぃ? 高田くんに?それともちゃんに?」
弾んだ様子で夏香は匡に問いかける。
「え、そんなの決まってるじゃん――」
そんな彼女にニコッと笑ったものの、言葉がなかなか出てこない。
匡は緑との2人を交互に見る。
「――どっちも、かな…」
いつもと変わらぬ穏やかな表情で会話をしながらこちらへ歩いてくる視線の先の2人を見て、匡はパッと笑顔になった。
「一番いいのは、俺が真ん中な関係!! だって、2人とも大事な友達なのは変わんないし」
「あ、分かるなぁ、その気持ち」
彼に同意しながら夏香はの方へ歩いていく。
彼女の後ろをついていくような形で匡も彼らの元へ歩き始めた。
まだまだ続く…でしょうね^^;
復活してきたので、「この時を逃すまじ」と書きました。
久しぶりに間が開かずに更新できた気がします;;
この調子でどんどん進めていけ…:たら……いいな^^;
というわけで、読んでくださった皆様、ありがとうございました!!!
吉永裕 (2008.6.27)
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