不器用な彼女 第8話
突然の幹の言葉には思わず固まる。
意識もしたことがなかった言葉とその意味。
「図星?」
「…い、いや…そのっ…考えたこともなかった…から……」
呆然と口を開く。
しかし次第に頬が熱を帯びてきた。
「考えたこともないって…態度に出てるくせに」
「た、態度って何だ…?」
「あいつに対して動揺しすぎ」
「そうか…?」
今までのことを思い出してみる。
確かに匡の言動にドキドキとすることはあったが、それは彼が“可愛い”とか“好き”とかいう言葉をさらりと使うからで、
そのような言葉に慣れていないから自分は動揺してしまうのだと結論付け、幹にもそのように話した。
それを聞いた彼はうーんと首を捻っていたが、ちらっとこちらを見ると頷く。
「…まぁ、分からなくもないか。今のって褒められるのに慣れてなさそうだし。
っていうか、自分に自信なさ過ぎ?」
「…自信なんて……あるわけがないだろう。自分自身、こんな女は変だと分かっているんだ」
「それでも変えないわけ?」
「もう…話し方も、無表情なのも、地になってしまったからな」
「…」
そう言うと幹は表情を曇らせる。
「今からだって……変えようと思えば変えられるとは思うけどさ。 でも――」
途中で言葉を止めて背中を向けた。
「あいつらは今のでも友達やってくれてんだろ? 自信持っていいんじゃねーの」
もしかして励ましてくれているのだろうか、と思いながらもは驚きの表情を浮かべた。
もしかすると彼は彼なりに責任を感じてくれているのだろうか――時々、そう思う。
確かに異性を苦手になったのは彼がきっかけだったのかもしれないが、
自分がこうなった主な原因は自分自身であり、両親との関係であって……彼が、全部悪いわけじゃない。
「春日…ありがとう。私は、お前のことも友達だと思ってるから…。…その、お前が迷惑じゃなければだが……」
「そうやって優しくされるとすぐに相手を信用しちゃうお人好しなトコ、気をつけた方がいいぜ?
俺だってあいつら2人だって男は皆、オオカミだし」
「えっ…?ちょっと……春日っ!!!」
出て行くドアの隙間から覗いた彼の表情はいつものようにニヤッと笑っていた。
彼を見送った後、思わずくすっと笑みが零れる。
緑とも匡とも違うタイプの幹だが再会できて良かったと思った。
以前の関係から新しい関係を築けたということもあるが、
変に気を遣われるよりもズバズバと本当のことを言ってくれたり、時々茶化したり嫌味を言ったりする軽快さを持った彼は
至らなさを理解させてくれる存在であり、狭くて硬い思考と表情の自分を少し広げてくれる存在だ。
こんなことを考えている自分は、彼を利用しようとしていると怒られてしまうだろうか。
――そんなことを考えていたら、眩暈がしてきた。
「少し騒ぎすぎたな…」
ふらふらとベッドへ行き、ばたりと倒れ込む。
そうして幹の言った言葉を思い出した。
「って…あの匡って奴が好きでしょ」
自分では全然意識していなかったこと。考えてもみなかったこと。
勿論、幹に説明したように匡の無邪気な言動に動揺するからであって、これは恋心ではない筈だ。
それでも、何だか凄くドキドキする――
熱で朦朧とした頭のまま、は目を閉じた。
勿論のこと続きます(´д`、)
相変わらずご無沙汰しています^^;
案の定、なかなか進みませんが……これからヒロインは変わっていく筈!
それと同時に物語も変わっていく筈!(笑)
連載作品が少なくなったので、今後はもう少し早くこの作品を更新できると思います。
読んでくださったお客様、ありがとうございました^^
吉永裕 (2008.6.22)
次に進む メニューに戻る