『コンコン』
は呆然としながらヤンの部屋のドアをノックする。
「さん?どうしたんですか?」
「…」
正気に戻ったは何を言えばいいのかわからずにただ突っ立っていた。
「私に会いに来てくれたんですか?」
「…うん」
「こんな時間に来るなんて私に襲ってくれというようなものですよ?」
ヤンの笑顔で言う冗談に、コクンと頷いた。
「…えっと…それは…どういう――」
は驚いた表情の彼に静かに近づき、ギュッと抱きしめる。
「さん…」
ヤンもゆっくりと彼女の背中に手を回した。
「今更、冗談だって言ってももう止められませんよ。 …私の気持ち、ご存知でしょう?」
「…本気だよ」
は真剣な表情で彼を見つめる。
「…」
ヤンは3秒ほど呆然とした後、彼女の頬にそっと手を伸ばした。
「…夢のようだ。情けないけど涙が出そうです」
「私なんてもう泣いてる」
は微笑みながら涙を流す。
「…本当に、心の底から愛しいと、こんなに好きだと思ったのは貴女が初めてです」
ヤンは少し照れながら彼女の涙を拭っていく。
「…ホント、好きだよ。ヤン」
独り言のように呟いた。
「私もさんが好きですよ」
ヤンも静かに呟き、眼鏡を外して胸ポケットに入れに顔を近づける。
「…。眼鏡外すと大人っぽいんだ」
「年相応でしょう?」
「うん」
そう言い、2人はもう1度唇を重ねる。
先程のとは違い、濃厚なキス。
「――んっ…」
の身体から力が抜ける。
そんな彼女を抱えてヤンはベッドに運んだ。
「…ちょっと緊張してます」
「私もだよ。ほら…」
は彼の手を取って自分の左胸に押し付ける。
「ね、ドキドキしてる」
「私もですよ」
そうしてヤンは彼女を抱き寄せると再び甘くて長いキスをした。
「…黙っててごめん」
はヤンのウェーブがかった髪を指に絡める。
彼は自分の肩を抱いたまま眠っている。
「いなくなるなんて言ったらヤン、怒りそうだし」
ヤンの寝顔を見つめる。
「知らない方がいい事もあるよね。
私も…、もうすぐ消えるなんて自分で言ったら、その時点で消えちゃうような気がするし…」
涙がの頬を流れていく。
「…好きだって言わない方がよかった?
私の気持ち、知らない方が後々幸せだった…?」
ヤンの寝顔に問いかける。
「…私の事、早く忘れて幸せになってね」
「…さん…」
「!」
彼の寝言に胸が締め付けられる。
「…傍にいたいよ。ずっと貴方の傍に…いたかった……」
ヤンの温もりを感じながら、は涙を流し続けていた。
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