『コンコン』

は呆然としながらランの部屋のドアをノックする。

。どうしたの?」
「…ちょっとお話、しない?」
「うん、いいよ。あ、テラスに行く?風が気持ち良いよ」
「ううん、ここがいい」
「え…?あ、じゃあここで話そっか」

そうしてランは彼女を部屋に招き入れる。

「何か飲み物でも貰ってこようか…って!? な、何してんの!?」

彼がドアを閉めて振り向くとは洋服のファスナーを下ろしていた。

「服脱いでる」
「そんなの見れば分かるけど…。どうして…?」

ランは目のやり所に困り下を向く。

「ランくんが…好きだから。一度でいいの、抱いて欲しい」

そうして服を脱ぎ、下着姿になる。
は自分でも思考回路がどうかしていると思ったがそれでもランに抱いて欲しいと思った。
言葉では足りないくらい、ランの事が愛しくてランの全てを感じたかったのだ。

「…冗談じゃ…ないの?」
「本気だよ!」

目からは感極まって涙が溢れ出てきた。
ランはそんな彼女を見て驚く。

「…ボクも…の事が好きだよ。でも…、君がそんな事するなんて想像もしてなくて…」

突然過ぎて戸惑いを隠せない彼を見て、 は途端に怖くなる。

「…嫌いになった…?」

ランに抱かれないよりも嫌われる方がずっとつらくて悲しい事だとわかったのだ。

「ごめんなさい…、ごめんなさい…っ!」

は床に膝をつき、嗚咽を漏らす。

…」

ランは静かに近づいて跪き、上着を脱いで彼女の肩にそっとかける。

「…今日の、何か変だよ?」
「…だって明日…」

は明日、自分が消えてしまう事を話しそうになるが、ぐっと堪えた。
それにもしランの身に何かあったらと思うと、気が狂いそうになってしまうのだ。

「明日…?あ、もしかして明日の事が心配なの?」

ランの優しい問いかけには頷くしかない。

「そっか。でも、大丈夫だよ。には危険が及ばないだろうし、ボクもこう見えて結構、鍛えてるし。
 何の心配もいらないよ」

彼女に向かって彼は微笑む。

(優しくて可愛くて、でも男らしくて頼りになって…。私、本気でランくんが好きだ…)

ランの笑顔には彼への想いを再確認させられる。

「…好きだよ」

ランの左肩に額を乗せて掠れた声で呟く。

「…ありがと、。ボクも君が大好きだよ」

彼は穏やかにそう言うとそっと抱き締めた。

『ドクン・ドクン・ドクン・ドクン』

ランの鼓動が聞こえてくる。

(ランくんが今ここにいる証。生きてるって証なんだ…)

彼の心臓の音に幸せを感じた。

「…私、幸せだよ」

は目に涙を浮かべながら幸せそうに微笑む。

「…

ランはそんなを愛おしそうに見つめると、ゆっくり顔を近づけ少し長めのキスをした。

「あ、あの…」
「何?」
「…服、着て欲しいんだ。その…、そのままの姿でいられると…ボクの理性がもたないっていうか…」

顔を赤くしてそんな事を言うランをは可愛く思う。

「わかった。じゃあさ、後ろのファスナー上げてくれる? 私、身体硬くていつも大変なんだ」
「あ、うん…」

そうしては服を着てランに背中を向ける。

「お願いします」
「う、うん…」

そう言い、ランはゆっくりとファスナーを上げるが途中で手が止まる。

「どうかし――!?」
「ごめん、…っ」

ランがを抱き締め彼女の左耳にキスをする。

「…っん…っ」

彼の指が背中のラインをなぞった。

「ランく…ん…っ」
「君をボクのものにしても…いい?」

は顔が熱くなるのを感じながら頷く。

「…君に夢中になるのが怖かったんだ。だからなるべく接触を避けてたのに…」
「そうだったんだ…」

2人は裸になってベッドで重なり、そっとキスを交わした。


 「…もっと私に夢中になってもらいたかったな」

身体を起こし、ランの髪の毛をそっと梳く。

「私が消えても…元気なランくんでいてね」

涙を拭いながらはすやすやと眠る彼の額にキスをする。

(ホントにホントに幸せだった。
 綿菓子に包まれてるみたいに甘くて溶けちゃいそうで……夢みたいだった…)

「忘れないね、ランくんの事……」

は朝までずっとランの髪を指に絡ませながら安らかな寝顔を見つめていた。



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