『コンコン』
はシャルトリューの部屋のドアをノックする。
「おや、どうかしましたか?」
「少しお話でもと思って」
「そうですね。少し外を散歩しながら話しましょうか」
「はい」
そして2人は霧で包まれた町に出た。
「何だか夢の中にいるみたいですね。家の光がぼやけてキラキラして」
「そうですね。霧の粒子に光が反射してとてもロマンチックです」
(一緒にいるのがシャルトリューさんだからかな)
「貴女と…一緒だからでしょうか」
「え…」
「あ、いえ。何でもありません」
(…私と同じ事考えてたんだ。何か嬉しい…)
ほころぶ顔を見られたくなくて、は少し顔を下げる。
「貴女とこうして故郷の町を歩けるとは思いませんでした」
「ここ、シャルトリューさんが生まれた町なんですか?」
「はい」
「そっか〜。それでシャルトリューさん、こんなに穏やかなんですね。 この町の雰囲気にピッタリだもの!」
「そうですか?ありがとうございます」
シャルトリューが微笑む。
「じゃあ…、もしかして婚約者さんもこの町の人だったんですか?」
「えぇ」
(…とっても奥ゆかしくて女性らしい人だったんだろうなぁ)
は亡くなったというシャルトリューの婚約者と自分を比べて少し落ち込む。
(私、落ち着きがないし、子どもだし…。全然シャルトリューさんと釣り合ってないなぁ)
そう思いながら彼の横顔を見つめた。
「どうかしましたか?」
「あ、いえ!何でも」
思いがけず目が合い、慌てて前を向く。
「そういえば、バーグさんはいつから身体を患っているんですか?」
咄嗟には話題を変える。
「…師匠が病にかかってから5年程経ちます。
私もいろいろと薬を研究しているのですが、これといった効果のある治療法がないのです」
「そうなんですか…。
あ、もしかして、シャルトリューさんがリース村で植物の研究をしてるって言ったのは本当の事だったんですか?」
「はい。いろいろ手を尽くしてはいるのですが…」
「…早くいい薬ができるといいですね」
「はい」
シャルトリューは穏やかに微笑んだ。
しかしふと足を止める。
「。…手を繋いでも良いですか?」
「え…。あ、はい…」
そう言うと彼の大きな手がの手を優しく包み込んだ。
そうして2人は歩を進める。
「足元に気をつけてくださいね」
「あ、はい」
(…何だ、単なる優しさか)
「…ただの言い訳です。すみません」
「え…」
するとシャルトリューが立ち止まったのでも立ち止った。
「貴女の手、温かいです」
「…シャルトリューさんの手も」
2人は手を繋いでゆっくりと霧のカムイを散策した。
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