「じゃあ私、昼食作りします」
「…大丈夫なのか?」
「どういう意味…?」
「う…。手伝ってやるから睨むなって!」
「ホント?やった〜」
「…現金なヤツ」
―山小屋の裏―
「とりあえず薪が来るまで火が使えないから下準備くらいしかできないけど…」
そう言い、は町で手に入れたジャガイモの皮をナイフで器用に剥いていく。
「…お前、うまいじゃん」
「そう?まぁ、記憶がなくなる前に料理してたんじゃない?」
「…記憶、まだ戻んないのか?」
腕まくりをして焚き火の準備をしているククルが口を開いた。
「うん、そうみたい」
自分の答えにチクリと胸が痛む。
「…俺の知り合いに前、聞いた事があるんだけどよ」
「うん?」
会話の続きを待っていると、ククルはの方を見ずに呆然と立ち尽くしている。
どうかした?と手を止めて彼の方へ近づいた。
すると微かに聞こえるくらいの声で、彼は再び話し始める。
「…元の記憶が戻ると、その反動で今のお前の記憶は消えちまうかもしれないそうだ」
「それって今度はククルたちの事、忘れちゃうって事…?」
「そうだな」
「そんな…」
ガツンと頭を殴られたようなショックが襲う。
出会って何年も経ったわけではないけれど、彼らには本当に世話になっているし、友情も芽生えてきている。
それを元の記憶が戻るのと同時に手放してしまうなんて。
(記憶は戻って欲しい…。でも、ククルたちの事は絶対忘れたくない…!)
「…私、忘れないよ!」
「…どうしてそう言える?確証はないだろ」
ククルは少し怒ったような顔でを見た。
「私はね、我が侭なの!両方の記憶を手に入れないと気が済まないのよ。
だから記憶が戻っても根性で絶対忘れないから!!」
「…」
彼女の様子に彼はフッと笑う。
「お前らしー」
「何よ、馬鹿にして!ククルは私がみんなの事忘れてもいいの!?」
その言葉にククルは表情を曇らした。
「…んなわけねーだろ」
そうして一歩ずつゆっくりとに歩み寄ってくる。
「お前は…、俺たちの大事な仲間だって思ってる。
戦闘じゃ役に立たないけど、見張りとか情報集めとかよく頑張ってると思うしな」
「…ククル」
いきなり頭をくしゃりと掴む彼の行動に、少し胸がくすぐったく感じた。
「。記憶が戻っても…お前は俺たちの仲間だからな」
「…うん!!」
はククルの言葉に心から喜ばずにはいられなかった。
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