アークバーン魔法学院物語
ある世界の小さな大陸にはアークバーンという名の国がありました。
そこには魔法学院があり、多くの若者がそこへ通っておりました。
魔法学院の中でも、もっとも騒がしいクラスが“ライオン組”です。
そのクラスは魔力や攻撃力、知力や体力といった総合力のトップが集まった少数精鋭クラスなのですが
プライドが高い人や嫌味な人、それに喧嘩っ早い人などがいて、常に誰かが喧嘩をしています。
ですがこの国を守っていこうという強い意志は各自持っているので
体育祭などでは一致団結し、物凄い力を発揮する…まぁ、学院一、優秀で有名なクラスなのです。
――そんなある日、ライオン組を更に騒がしくする存在がもう1人加わる事に。
「起立」
ガタガタと椅子と机の動く音と共に教室にいる生徒達は立ち上がる。
すると女子生徒を連れて、担任教官が壇上の上に立つ。
「礼」
一斉に礼をする生徒達。我侭な者もいるが、実は皆、真面目なのだ。
「着席」
そう言うと生徒達は再びガタガタと音を立てて着席していく。
「今日から我がクラスに入る転入生を紹介します」
穏やかな声で教官はその転入生を手招きした。
「さんです。このような学院で学ぶのは初めてだそうなので、皆さん、彼女が慣れるまで色々と力になってあげてください」
そう言うと、教官はに自己紹介するように促す。
はい、と頷くと彼女は一歩前に出て一礼した。
「といいます。まだこの学院の事はよくわかりませんが、早く慣れるように頑張ります!
これから宜しくお願いします!!」
元気一杯の声で挨拶した後、ニコッとは笑って見せた。
その笑顔にクラスの者たちは見惚れる。
女子生徒ですら目を奪われる程の輝きを放つ彼女はすぐに人気者になった。
1ヶ月も経つ頃、が特に仲良くなったのは、
学級委員長のレジェンス(17)と副委員長のカルトス(16)、席が隣のヤン(17)と席が後ろのラン(16)、
同じ飼育係のレノン(18)と家が近所のククル(18)、教養担当の教官・エドワード(19)と養護教諭のシャルトリュー(19)の8人だった。
カルトスやレジェンスは学院の事や授業の事を親切に教えてくれるし、
ヤンとラン、ククルは気さくに声をかけてくれる。
レノンは無口だけれど一緒に仕事をするうちに優しい人だと分かったし、
教官のエドワードは嫌味だけれど、周りに他の教官がいない時はこっそりコーヒーや菓子などご馳走してくれるし、
養護教諭のシャルトリューは学園の生活に不慣れな私の体調を凄く気にしてくれる。
はこの学院に来て、ライオン組に入れてよかったと心から思った。
――そうして、が転入して半年が経った頃。
「修学旅行!?」
昼休み、クラスメイトのヤンから話を聞いたは目を輝かせた。
「どこどこ?どこに行くの!?」
手に持っているフォークを振り回しながらは尋ねる。
すると同じく一緒に昼食を取っていたランが笑いながら答えた。
「ジッカラートって国だよ。アークバーン国と同じくらい歴史が長くて、独自の文化が発達してるんだって」
「今回はその国の名物と言われている“温泉”というモノを体験しにいくそうだ。
何やら病や怪我を癒す力があるらしい」
静かにカルトスが口を開くと彼の隣にいたレノンも頷く。
「他にも寺院という施設を見学する予定になっている」
そう言うと、レジェンスが今度の学級会で話し合う為に作られた修学旅行のレジュメを見せてくれた。
「へ〜温泉かぁ!!!」
はワクワクする気持ちを抑えられない様子でそれを見つめる。
「自由行動とかあるのか?」
「1日目の夜に約2時間、2日目は半日程ある筈ですよ」
ククルが身体を乗り出して尋ねると、ヤンはパラパラとレジュメを捲りながら答えた。
その言葉にククルだけでなくも喜ぶ。
「じゃあその時、お土産とか沢山買っちゃおうっと♪」
――そうしてとても楽しみな修学旅行の日がやってきました。
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