隣の石田くん 第19話?
生徒会長がフリーになってからというもの、休み時間の廊下は騒がしくなった。
特に呼び出すわけでもなく、話しかけるわけでもなく、ただ会長見たさに女子が集まってくるのだ。
人というのは、相手がいる人に対しては「仕方ないか、素敵な人だもん。恋人くらいいるよね」と
諦めの気持ちが既に生まれ、別れさせてでも付き合おうと考える人はそういないだろうが
相手がいなくなると、途端に欲が出てきてしまうものなのか諦めの気持ちを忘れ、今までそっと見つめていただけの子も
結構、積極的に行動したりするものだ。
…という自分もそう。
悠樹くんが彼女と別れると、むくむくと湧いてくる恋心は自分でも説明できない。
彼女がいる時には何も望まなかったのに、フリーになった途端に少しでも近づきたい、と思う。
まるで「だるまさんがころんだ」状態だ。
彼が隙を見せた時にこっそり近づく――なんとも情けない戦法。
「もうすぐ冬休みだな」
斜め前に座っている石田くんがカレンダーを見ながら呟いた。
こくん、と頷きながら私も口を開く。
「うん、早いね。この前2学期が始まった気がするのに。
気が付くと新生徒会が決まって、文化祭が終って……こんな感じですぐに3年になるんだね」
「――そしたら生徒会も解散、か」
会長の声が生徒会室に響く。
いつの間にか、週に1回は生徒会メンバーで集まり弁当を食べる習慣ができていた。
小学校や中学校時代からの友達だけれど、高校に入ってからは希薄な付き合いになっていた人たちもいるのに
こうやって再び交流が持て、更に子どもの頃には気づかなかった良いところを沢山知れて、それだけでも生徒会に入ってよかったと思う。
「でももう大きなイベントってないもんな」
「そうね。他の学校はクリスマスパーティーとか生徒会企画でしたりするとこもあるらしいけど。
さすがにこの進学校じゃやらせてくれないわよね」
「まぁでも文化祭がいつも以上に盛り上がっただけでも良かったじゃない。 何より主催側の自分たちが楽しめたし」
そう言うと、遠野くんと東ちゃんはうんと頷く。
秋期生徒会の一大イベントが終ってからというもの、メンバーは気が抜けてしまっているのだ。
「クリスマスパーティーか…。 無理だよな。終業式の日もテストするような学校だし。
文化祭の案を許してもらえたこと自体が意外だったし」
ふぅ、と会長はため息をついた。
お祭好きな彼のことだから、できるだけイベントを企画したいところなのだろうが
連休にも模擬試験などをする為に登校しなければならないこの学校にはそんなイベントをする時間などないのだ。
「まぁ、仕方ない。 じゃあ、学校でのイベントが無理なら個人的に集まって楽しまないか?」
「あ、いいね!皆でぱぁ〜っと遊んじゃう?」
「プレゼント交換とかしちゃったり!」
「パーティーとか小学生以来だし、逆に楽しそうだよな」
その日の昼休みはクリスマスのことでとても盛り上がった。
皆、このメンバーと一緒の時は居心地がいいのだろう。
そうして、まだ2週間程先だがクリスマスの日は会長の家に集まることになった。
「楽しみだね、石田くん」
「あぁ。 …あ、そうだ。お前、ちょっと早めにうちに来て飾りつけ手伝ってくれないか?」
「いいよ、そういうの好きだから」
そんなことを言いながら教室へと戻ったのだった。
――またか。
教室に戻ると、机の中に紙が入っている。
今週からよく手紙を貰うようになった。
といっても、素敵なラブレターの類ではない。
「石田さんのこと、好きなんですか? 好きでもないのに一緒に行動しないでください」
…という、なんともまぁ勝手な内容の手紙だ。
これはまだ丁寧に書かれているからいい。
最初に貰った手紙には色んな悪口が書かれてあり、正直「本当に高校生か?」と驚いた。
きっと石田信者は熱狂的な人が多いのだろうと思い、隣の席の会長を見ながらため息を漏らす。
しかし彼のせいではないし、自分は悠樹くんが好きだし、一緒にいるのは生徒会関係の用事があるからなので、
ファンの子達にどう思われていてもそれはただの誤解なのだが、
こんな風に差出人の名前のない手紙を一方的に貰うだけでは説明もできないので困る。
いっそ直接言ってくれたら誤解も解けるのに、と思ったけれども、面と向かって悪口を言う人もそういないだろう。
…と思っていたら、次の日の昼休みに呼び出された。
ぎゃー!次の話で20話!?
どうしよう、こんなに長くなるなんて思ってなかったのにっっ!!
というわけで、不穏な空気になってきました。
いじめ系が苦手な方はすみません。でも、そんな酷いことはさせないつもりですので^^;
吉永裕 (2008.12.14)
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