不器用な彼女  第7話


 「ななな…」

わなわなと震えながら夏香が口を開く。

「あ、お邪魔だった…?俺たち帰った方がいい?」
「匡、違うだろ! お前、赤坂さんに何してるんだ!?」

ポカーンとした匡に突っ込むと、緑が幹に向かって怒鳴りつけた。
その様子に美景は慌てて幹を突き飛ばす。

「――いってぇ…。 美景チャン、病人の癖に力強すぎ」
「その病人相手に何してんのよぉ、あんたはぁ!!!!」

夏香は靴を脱ぎ捨てると、急いで美景と幹の間に入った。
今にも彼に殴りかかりそうな勢いである。

「いやーからかうと面白くて、こいつ。全然、恋愛経験ないみたいなんだもん」

悪びれることなく、幹は髪をかき上げてケタケタと笑う。

「…悪かったな」

ムスッとしながら、美景もゆっくり起き上がった。

「ところで、夏香たちはどうしてここに?」
「昨日、美景ちゃん風邪っぽいって言ってたからさ、元気つける為に皆でお鍋でもしようと思って。
 メールしたんだけど返事なくて、なのに電気ついてたから気になっちゃってさ」
「あぁ…悪い、ずっと寝ていたから」

ちらっとベッドサイドに置いていた携帯を見た。
普段はメール音に気づいて目が覚めるのに今日は全く気づかなかった。
余程疲れているのか、それとも薬のせいなのか。
なんにせよ、皆に心配をかけてわざわざ家まで来させて申し訳ないと思った。

「そんなに酷いの?大丈夫かよ?」
「――っ! あ、あぁ…」

突然、視界に入ってきた匡の顔に思わずびくりとする。
やはり異性に覗き込まれるのは苦手だ。

「とりあえず、茶でも出そう。高田くんも上がってくれ」
「あ、うん。お邪魔します。 でも、お茶はいいから寝てなよ」
「そうよ、寝てなきゃ」

緑と夏香にせっつかれて美景は仕方なくベッドへ向かった。
何だか客が来ているのに、自分はベッドに入っているなんて非常に心苦しいが、
これ以上心配をかけても悪いので大人しくしていようと思う。

「それにしても、ホントに2人って昔、付き合ってたとかじゃないの? めちゃくちゃ仲良いじゃん」

匡が幹と美景の顔を交互に見ながら口を開いた。

「っ!? だ、だから…」

無邪気に笑いながら話す匡を見て美景は声を失う。
そういえば前も同じことを言われたと思い出した。
何だか胸が少し痛む気がする。
しかしそれはかつていじめにあった時の引き裂かれるような痛みではなくて、
ギュッと胸を掴まれたような……不思議な感覚を抱きながら美景は布団に少し顔を埋めた。

「前も言ったけど、絶対ないって。 ってか、赤坂って今まで誰とも付き合ったことないでしょ」

両肩を上げながら幹が否定する。
その言葉に匡と緑は驚いた。

「え、そうなの?」
「ホントに?」

2人の視線を一気に集めてしまい、恥ずかしさと情けなさで死んでしまいそうだ。
どうせ私はモテないし、第一男子とまともに話せない人間だ、と心の中で呟く。

「その割には少女漫画、沢山持ってるよねー。あと恋愛論的な本も。 完全に知識先行型って感じだね。
 まさか恋愛に、凄く夢見ちゃってるんじゃない? 恋愛ってそんな綺麗なモンばっかりじゃないよー?」
「お、お前…っいつの間に!!」

美景はガバッと起き上がった。
密かな趣味を皆に知られてしまったことが途轍もなく恥ずかしい。

「えー、でもそういうの可愛いじゃん。俺、純粋な子、好きだし」
「え…」

匡の言葉に美景は思わず固まる。
嬉しさと恥ずかしさで一気に頬が熱くなるのを感じた。

「緑もそう思わない?」
「――あ…うん、そうそう。 別に付き合った経験がなくても、全然恥ずかしいことじゃないよ」

彼女の様子に気づいた緑は一瞬複雑そうな表情を見せたが、いつものように穏やかに笑って見せる。

「……フォローを…ありがとう、2人とも」

何故だか普段以上に声が出ない。
そんな美景に匡は手を拳にして両手をブンブンと縦に振った。

「だから、フォローじゃないってば! もっと自信持ちなよ、美景」
「…ど、努力する……」

最後の方は彼の顔が見れなくなってしまい、俯いた。
何だか妙に動悸がする。
本格的に風邪を引いてしまったのだろうかと思った。



 その後、あまり長居しては迷惑だからと言い、夏香たちは帰っていった。
しかし、彼女たちが帰るのと同時に家を追い出された幹が数分後に戻ってくる。

「…どうした?忘れ物か?」
「……いや。何ていうかさ」

猫のような口の形で軽く笑って見せると、彼は思いがけない言葉を口にした。

「赤坂って…あの匡って奴が好きでしょ」






まだ続きます^^;



お久しぶりです、かなり^^;
久しぶりな割りに、全然先に進んでなくてすみません。

今まで勿体つけてましたが、この作品はあっさりと終わらせるつもりです(;´▽`A``
簡単に時間が経つようにしたいと思っています…。
だって…1日1日過ぎていくように書いていったら…永遠に終わらない(TT)
ただ、ヒロインは1日1日ちょっとずつ成長するようなタイプなので…
そこらへんをどう調整していくかが課題です。

まだまだ続きそうな予感ですが、これからもよろしくお願いいたします。
ここまで読んでくださったお客様、ありがとうございました!!


吉永裕 (2008.4.28)


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追記(2008.6.4)

何だか文章が前回のと混ざり合って大変なことになってましたね^^;
ボケボケですみません。