隣のくん  第4話?


 …行きたくない行きたくない行きたくない。

昼休み。弁当を急いで食べた私は、ある教室の前にいた。
このドアを開けてしまったら、もう元の普通の穏やかな生活には戻れない。
何で私は昨日、あんなことをしてしまったのだろう。

 …それもこれも――

「何ボーっとつっ立ってんだよ!」

『バシっ』

 ――この暴力生徒会長・のせいだ。

ギリリと唇を噛み締めて右斜め後方を見上げる。
叩かれた右腕が痛い。

「…何だよ、その目」
「…別に」

そう言って前へ向き直った。
この扉の向こうは生徒会室。

 ココを開けたが最後、私は副会長という肩書きを持った女になってしまう…!

と考えていると、ドアをガラッと開けたくんが私の腕を掴んで部屋に引っ張り込んだ。

「ちょ、ちょっと心の準備が!」
「はぁ?顔見知りばかりなんだから、準備も何もねーよ」

そう言ってポイっと部屋に放り込まれた私の前にいたのは小学校、中学校からの同級生だった。

「…何?もしかしてくんが全員無理矢理に…」

『バシィ』

「うるせー!」

だから殴るな!!! と言いたい所だが、とりあえず落ち着いてみせる。
――何故ならそこに私の好きな人がいたから。

「とりあえず、紹介はしとくぞ。皆、椅子に座れ」

そう言ってくんが黒板に役職と名前を書き始めた。
私たちもとりあえず、コの字に並べられた長机に2人ずつ座った。
私は副会長なので仕方なく前に1人で座る。

会長―
副会長―
書記―東島佳織とうじまかおり遠野和俊とおのかずとし
会計―宮崎怜子みやざきれいこ

…好きな人以外は皆、小学校からの親しい面子だった。
メンバー的には悪くない、寧ろ楽しくなりそうな予感がする。

「というわけで、よろしく!」

そう言って会長は無邪気に笑った。
…まぁ、このメンバーにした理由は何となくわかる。
私を含めた他のメンバーもくんに頭が上がらないからだ。
それでも私のように皆が暴力を受けているわけではない。

東ちゃんは倍以上の反撃を返してくるから手が出せないみたいだし――兄貴が多いせいか強いんだ、彼女――
くんはくんと中学の時から結構仲がいいし、
もしかしたら怒らせたら怖いと思っているのかもしれないが、ミヤには何だか無関心だし…。

 …というわけで、この中でこき使われるのは、私と遠野くんだけか。

そんなことを考えながら、私は好きな人をこそっと見やる。

 くんが生徒会に入るなんて嬉しいな。
そう思っていると、彼の隣に座っているミヤと目が合ってニヤッと笑われた。
ミヤは小学校の頃から中学まで同じクラスで、学校外でも遊んだりしていて仲がいい。
勿論、くんを好きなことも知っている。
絶対後でからかわれるなぁと思っていると、くんが冊子を配り始めた。
よく見ると、それは去年の文化祭の冊子である。

「俺たちの初仕事は文化祭だ。
 まぁ、その前に生徒総会があって今後の抱負とか仕事の計画とか言わなきゃならないけど、まぁ、それは置いといて」

と言って黒板に“面白い文化祭にするには”と書き始めた。

「何かさ、今までの文化祭ってちまちまして面白くなかっただろ?
 だからもっと楽しめるような雰囲気にしたいんだよな。
 その為に生徒会的には皆が参加できるような面白いイベントを企画したいんだけど、何かいい案ないか?」
「いきなりそんなこと言われてもなぁ…」

そう言って皆は頭を抱える。

「まぁ、今日は顔合わせのつもりだったからこれで終わるな。 文化祭のこと、考えといて」

そうして各自、席を立って教室を出て行った。
残されたのは私とくん。
とりあえず、私は黒板に書かれた大きくてゴツゴツした文字を消す。
くんは窓を開けに行った。

「生徒会、入って良かっただろ?」
「…まぁ、ね」

くんが何を言おうとしているのかは分かっていた。

「…もしかしてくんが会計として入ったから私を誘ったの?」

私は黒板消しを持ったまま、窓辺のくんの方を向く。

「まぁ、順番的にはそんな感じだけどな。でも俺は元々お前を誘う気だったけど」

逆光の彼は穏やかに笑った。
それがとても大人びて見えて先程無邪気に笑った人とは思えなかった。

「ありがとう、嬉しい」

素直に礼を言った。

「おぉ、俺が生徒会長になったこと、感謝しろよ」

くんは偉そうに笑ってみせる。
それが何だかおかしくて私もクスクス笑った。
そうして黒板を綺麗にすると、私も窓辺に行く。
すると

「お前、チョークの粉まみれじゃねーか」

そう言ってくんが腕や背中をはたいてくれた。
全然痛くないので「何だ、力調節できるんだ」と思ったらまたおかしくなって、笑っていると
くんは「何がおかしいんだよ」と私の頭をコツンと殴る。

――何だか楽しみになってきたよ、生徒会。

そう言ったら一瞬複雑そうな顔をしてくんも笑った。








さくらさんに移転、一発目の小説だ〜!!!

尚且つ久しぶりの「隣の○○くん」の更新です!うわ、二ヶ月ぶり!!!!
本当に遅くてすみません…m(_ _)m


今回は生徒会メンバーが集まりました。
ここまで人が増えるとは思わなかった(;´▽`A``

というわけで、次第に生徒会長さんと仲が良くなっている気もしますが…どうなることやら。


ちなみに、メンバーのイメージを紹介すると、


…茶色がかった髪、言葉遣いはガサツだがどことなく甘いマスクをしている。細身だが筋肉はある。
     中学の水泳の時間に彼の物凄い背筋の発達ぶりを見て、は一時期背筋フェチになった。
…成績も運動神経もいい方。身長や体型は恐らく標準〜標準以下。本人はいたって普通と思っているが、綺麗系美人。
     昔からと一緒にいたため、男子のノリにもついていける。が、基本は受け身人間。
くん…サラサラヘアー。運動神経抜群。大人しいような外見だが意外とお茶目。
・東ちゃん…身長はより小さい。色白で可愛い系だが、結構斜に構えていて冷静に毒を吐く。
        怒らせると「オラー」と拳を振り上げ暴力に訴えるある意味会長よりも怖い人。
・ミヤ…長身でほっそり。つり目の綺麗系。黙ってると冷たそうだが、実際話して見ると無茶苦茶ノリのいい面白い子。
・遠野くん…ちょいと弱気な眼鏡ボーイ。どっちかというとオタク系。優しいがには何故か強い。
        会長がいなければ普通にノビノビしててジョークを言ったりする。

…というわけで、強さ順に言うと

東ちゃん>=ミヤ>遠野くん>

…という風になってしまうという大変な状況です^^;

…こんな感じで、次第に連載モノへと向かいつつありますが、どうぞ今後も宜しくお願い致します!
是非またいらしてくださいね!


吉永裕 (2006.8.17)


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