リクエスト




 「うーん……ついに来たか…」

はパソコンの画面を見て唸り声をあげた。
そこには開いたばかりのメール画面。
そのメールはメールフォームが送られてきた時に指定しているメールアドレスに転送されるもので、メールフォームの内容もそのまま送られてくる。

今回のメールフォームは、リクエスト専用のもの。
そして相手が希望してきたのは、“幼馴染との恋”だった。


 そもそも何故、にこのようなメールが送られてくるのかというと、
昔から本を読むのが好きだった彼女は次第に自分も何か作れないかと思うようになり、高校時代から詩や小説を書くようになって、
大学生になった今では自分のホームページまで開き、それまで書き溜めた小説を公開しているという趣味を持っているのである。
そしてそこに設置しているメールフォームにて時々読者から感想を貰ったり、リクエストされたりするようになったのだ。

自分の作品が受け入れられることが嬉しいのと、読者に少しでも喜んで貰いたいという気持ちから、
はリクエストはできるだけ迅速に優先して取り組むようにしていた。
なのに、今回はリクエストを受け取った時点で既に白旗をあげたい心境に陥っている。
それは、リクエストに挙げられた恋愛対象が原因だった。

小学生の頃から女子のみの一貫校に通っていたは、異性と接することが極端に少なく、恋愛そのものに縁がない生活をしていた。
それでも出会おうと思えばいくらでも出会いはあるし、実際に周りの友人たちは塾や友人の紹介などで彼氏をゲットしていた者は多くいた。
その一方で、昔から読書や裁縫など室内に籠って一人でするような趣味にのめり込み、必要以上に外に出ようとしなかった
ただ単に自分から出会いの機会を減らしていただけなのである。

そんな自分の恋愛経験不足も相まってか、特には王道とかベタと呼ばれるようなシチュエーションや相手を恋愛対象とした小説や漫画を好み、
自分で書く分にも、王子だとか先生だとかいう存在を対象にした小説はいくらでも書けるものの、
何故か王道中の王道と思われる幼馴染を相手にした小説はサイトには一つもなかった。
その理由は――

「…、お前こんな休日の昼間から趣味に没頭してんのか? 根暗っぽいぞ」
「暗くなんてないし! インターネットは広い世界なのよ」

ノックもせずにドアを開けたのは、という男。
異性と殆ど縁がないにとっては唯一の異性の友人といってもいいかも知れない。
彼はと同い年、と同じように家から大学に通う大学生で、尚且つ彼女の家の隣に住む――そう、いわゆる幼馴染である。

このとの関係がある為、は幼馴染の話を書けないのだ。
幼馴染の設定を考えることすら、何故か躊躇してしまう。
幼馴染=という脳内変換が勝手にされてしまい、その時点で思考が停止してしまうのである。

自身、のことは幼馴染としてしか見ておらず、昔からの喧嘩友達くらいにしか思っていない。
だから尚更、幼馴染を恋愛対象として描くということができずにいた。
幼馴染が恋人になるまでの過程や、異性と意識し始める瞬間がどうにも想像できないし、寧ろ想像すらしたくない気持ちになるのだ。
したがって幼馴染との恋愛をテーマにした作品を読んでも、「実際は違うのにね」としか思えない。

「――っていうか、いつも言ってるけどノックくらいしなさいよね」
「玄関のチャイムは鳴らしたからいいじゃん。どうせお前、趣味に没頭して気付かないと思ったし」

そう言う彼には趣味のことを話している。
というよりも、「いいなぁ、私も王子様と結婚したいなぁ」と呟いたに「だったら自分で書けば?」と
適当にが言ったことがきっかけで趣味が始まったので、彼には感謝の気持ちをもって趣味の成果をよく披露していたのだ。

その度に「こんな恋愛とかありえねー」とか「こんな男がいるわけねーじゃん」と突っ込まれるが、
彼が趣味や作品そのものを馬鹿にすることはないし、何だかんだ言って新作を催促してきたりもするので
意外と王道な恋愛話、しかも女性目線の話が好きなのかもしれない。

「…にしては手が止まってんな」

そう言い、は傍にやって来てパソコンの画面に目をやる。

「おお、リクエスト貰ったのか? 良かったじゃん」
「うん、凄く嬉しいんだけど……幼馴染っていうのはねぇ」

はふぅとため息をつく。
そんな彼女にはキョトンとして親指で自分を指差した。

「何で? 俺という超理想的なモデルがいるじゃん」
「いや、無理」

は即答する。

をモデルにしたら尚更書けないよ。私が主人公の気持ちになれないもん。
 ってかさ、は幼馴染が異性になる瞬間って分かる?」
「んん? ……あー…、んーっと……」

思いもよらない質問だったのか、は返答に迷って顔をしかめている。
そんな彼を見ては何だかホッとした気持ちになり、頷いた。

「分かんないでしょ? そうなのよ、そういうのが想像もつかないからキャラクターの設定すら浮かばなくて」
「まぁ、根本的にお前は恋愛経験がゼロな上に、全部妄想で話を書いてたわけだから今回もモデルなしの方が良さそうだな」
「そうだね」

それすらも勝手に脳内変換されてしまうので無理に近いかも知れないけれど、と思いながらもは笑顔で頷いてみせる。

「…それよりも、今日は何の用事で来たの?」
「ああ、忘れるところだったぜ」

はそう言ってのベッドに腰を下ろした。

「大学の友達がさ、合コンしようって言ってんだけど。お前、協力してくれねーか?」
「合コン……? 周りの会話ではよく聞く言葉だけど…私は興味ないなー」
「それは分かって俺も頼んでんだって。でもさ、男は女子高とか女子大とかに妙な夢を抱くもんで、
 一度はそういう女子とお知り合いになりたいっていう健気な思考を持った生き物なのだよ」
「そんなもんなの?」
「まぁ俺はお前から凄まじい話を聞いてきてるから幻想すら抱けねぇけどな」
「でしょうね」

女子高の内部をよく知る2人は笑った。
女子だけの空間にいると、本当に女という生き物のオープンかつ大胆、そして激しく醜い部分を垣間見ることができる。
「御機嫌よう」などといった挨拶を交わすお嬢様学校なら話は別だが、
それ以外の女子高は殆どサバンナ状態なのではなかろうか、と現状を見てきたと彼女からリアルな話を聞いてきたは思う。

それでも女子の和気藹藹として活気溢れる雰囲気は好きだったし、女子にしか分からないような体や恋愛の悩みも平気で相談できるし、
女子高には女子高の良さがあるというものだ、とは結論付けている。

「でもお前も今後のネタとして合コンに参加してみるのもありなんじゃねーの?
 たまには現実の男を見て、男の仕草とか習性とか勉強したら?
 逆に妄想の世界でしか恋愛できなくなるかもしれねーけど、現実を知ることで男キャラに幅が出てくると思うぜ」
「おお…何だかもっともな意見を……」
「っていうか、友達に本気で頼まれて断れないだけなんだけどさ」

そう言うを見ては苦笑する。
口は悪いが、の趣味も普通に受け止める彼は基本的に優しくていい人なのだ。
何だかそんな彼の頼みを無碍にはできず、気は進まないもののはメンバーを集めることにした。




 ――そうしてその1週間後。

「…えっと、です。大学2年生です。今日はよろしくお願いします」

ぎこちない挨拶をしながらは男性4人に頭を下げた。

「いやいやいや、面接じゃないんだから」

そんなが笑顔で突っ込みを入れてその場に笑いが起きる。
何だか彼がいてくれたことに感謝して、はホッと胸を撫で下ろした。
そうしての友人3人と男性4人の自己紹介も終わり、一同はグラスを持って乾杯する。

「…ってか。お前、酒とか飲めるの?」
「ううん、飲んだことないよ。家族は誰も家で飲まないし、私もサークルとか入ってないから飲む機会もないし」
「うえっ、大丈夫かよ」
「そんな一気飲みするわけじゃないし、大丈夫でしょ」

心配するに笑顔で答えて、は初めてのお酒となるアップル・シューターに口をつける。
見た目もグリーンで綺麗だったが、見た目の通り喉越しも爽やか。
甘めに作られているのか、最初にアルコールのツンとする感じはしたもののジュースのように思える。

「え、お酒初めてなの?」
「珍しいねぇ」

の友人らに話しかけられて一瞬動揺するものの、は笑って頷く。

「皆は飲んだことあるの?」

女友達が気になったので彼女らに問いかけると、彼女らは当たり前のように頷いてみせた。

「勿論よ、私サークルに入ってるし」
「私も友達の誕生日会とかで結構飲んでる」
って最近二十歳になったんだっけ?」
「ううん、そういうわけでもないけど…」

そう言うと、すぐに話題は誕生日になって何やら友達らと男性陣は盛り上がっている。
そのような中に率先して入ろうとも思えず、は目の前の食事をパクパクと口に運んでいると前に座っているが目で“お前も話に入れ”と合図してきた。
すかさずは“無理”と口を動かす。
そんな彼女に彼は仕方ねぇなぁというような様子で苦笑した。


 その後、トイレに行くと友達の1人もやって来て手洗い場で顔を合わせる。

ってあんな恰好良い幼馴染がいたんだね。いいなぁ」
「え? って恰好良いの?」

友達の思いがけない言葉にはリップを塗る手を止めた。
反対に友達は慣れた手つきで化粧を直している。

「恰好良いのって…、意識したことないの?」
「全くないよ。そもそも男友達って全然いないから比較のしようがないし、男の知り合い自体が先生以外はしかいないもん」
「うわー、それ損なのか贅沢なのか分かんないね」
「損は分かるけど、贅沢って何?」
「あんな恰好良くて性格も良さそうな幼馴染を独占してるってこと」
「独占って…別に私は独占したいとも思わないししてるつもりもないしなぁ」

首を捻りながらそう言うに友達はくすっと笑い、コンパクトをパチンと閉じる。

は本当に昔から純粋で可愛いよね。お姉さん、心配になっちゃう」
「もぉ、こういう時だけお姉さんぶって。試験前は泣きつくくせに」

そう言うと友達は女子高時代のように口を大きく開けて笑った。

「でもちょっと安心した。いつもってばこっちが誘わない限りずっと一人で読書してるし、学校以外の姿って想像できなかったんだけど。
 ちゃんと傍に守ってくれる王子様はいたんだね」
「だから、はそんなロマンチックな存在じゃないんだってば」

脱力するの頭を友達はよしよしと撫でて、肩を持ち彼女を前にして皆の所へ戻る。
そんな友達に苦笑しながらも、大切に想ってくれる人がいて良かったと思った。

席に戻ってくると、場は何やら趣味の話で盛り上がっている。
皆の発表する趣味はとても自分とは対照的に明るくメジャーなものばかりで、
男性陣はドライブやサークル関連のスポーツ、女性陣はショッピングやカラオケ、映画鑑賞などであり、
は自分の番が回ってくるのが酷く不安だった。

こういう公の場で趣味を聞かれると困ってしまう。
携帯小説が世間で一時期話題になっていたこともあり、恐らく趣味で小説を書く人口も増えたしそれを受け入れる人も増えたと思うのだが、
は堂々と小説を書いていますとは恥ずかしくて言えなかった。
書いていると言えば、どんな内容なのかと聞かれるような気がするし、内容を話したら「夢見がち」とか「恋愛経験もないのに?」と笑われるのが怖かったのだ。
だから大抵の場合、趣味を聞かれた時は読書と答えている。

実際に学校など人目につくところでは小説を書くことはないし、常に本を携帯して読んでいるので、
趣味を答えると殆どの人が頷いて納得してくれる。

ただ、今回参加に協力してくれた女友達3人は自分が小説を書くというのを知っている。
高校時代、文化祭の劇のシナリオはが担当したからだ。
その劇はとても絶賛されて、周りからもクラスメイトからもシナリオを褒められて嬉しかったことを覚えているが、
それでも毎日、没頭するほどの趣味だとは彼女らも知らない。

「――じゃあ、さんの趣味は?」

ついに来たか、とは腹にぐっと力を入れ、笑顔を作って口を開く。

「根暗な趣味なんですけど、読書です」
「あぁ、そうなんだ。さん、頭良さそうだもんね」
「うんうん」

笑顔で明るく言ったのが良かったのか、比較的引かれずに済んだ。
は緊張で掌に浮き出た汗をそっとハンカチで吹く。

「俺は少女漫画とか小説を読むのが趣味かな」

ふと向こうから聞こえた声に顔を上げると、が笑顔で答えている。
するとその意外な答えに全員が食いついて彼は一気に注目の的になった。

「えー、意外なんだけど」
「お前、そんなの読んでたっけ?」

などと男女関係なく彼に視線が集まる。

「最近はネットとかで面白い話書いてる人もいるし、絵の上手い人とか探すの楽しいよ」
「へぇ…そうかぁ」
「でも、そういうの書く奴ってオタクが殆どじゃねーの?」
「ああ、そんな感じだよな!」
「絶対性格暗いぜ」

そんな男性陣の言葉にの表情は固まった。
世間のイメージはやはりそんなものなのだと改めて突き付けられる。
しかし――

「っ…お前ら、そんな言い方――」
「――私、結構携帯小説とか読むし」
「普通の子が書いてるよね」
「今はそういうの、当たり前の時代じゃない? 周りの友達とか結構ブログで書いてるよ」

落ち込んだの気持ちをぐっと引き上げるかのように、女性陣らが言葉を発した。
そんな彼女らの一斉拒否に驚いたのか、男性陣は話題を切り替える。
は今にも泣いて抱きしめたい気持ちを抑えつつ彼女らを見つめ、心から感謝した。




 その後、気分を良くして立て続けにカクテルを注文したは駅から家までの道の途中で崩れ落ち、に背負われて帰宅していた。
すると彼は小さい声で彼女の名を呼ぶ。

「…なーにぃ……?」

気分は悪くないものの、体の力が入らないような状況のはだらしなく彼に応えた。

「今日は…ごめん。俺が余計なこと話したせいで嫌な思いさせた」
「んーん。いいよ…」

は彼の頭に自分の頭をくっつけてもたれかかる。

「世間一般の意見も聞けたし…、それに……女友達の素晴らしさが分かったもん」
「そうだな。お前、いい友達持ったぜ」

静かにそう言い、ゆっくりと歩を進める
できるだけ揺らさないように気を遣っているのだろう。
そんな言葉以外の部分からも彼の優しさを感じてはくすっと笑った。

も…ありがとう」
「何が?」
「友達に注意しようとしてくれたでしょ?」
「…別にお前の為とかじゃねーから。俺の趣味も馬鹿にされたような気がしただけだよ」
「……うん…」

らしい言葉の選び方には微笑んで腕に力を込める。

「…私、幼馴染がでよかった……」
「はぁ? どうした、いきなり」
「どうもしないけど、でもでよかった」
「意味わかんねぇよ、この酔っ払い」

ぶっきらぼうな彼の言葉に思わずうふふと笑い声が漏れる。

「――っていうか耳元でボソボソ囁くなよ。くすぐってーし、なんか……ドキっとするだろ」
「え…?」

思いがけない言葉には顔をあげて彼の横顔を見つめると、彼は何だか赤くなっていた。

、顔赤いよ? 今頃お酒が回ってきた?」
「アホっ、そんなんじゃねー」

そう言い、彼は通りがかった児童公園のベンチにを下ろして、自分も休憩する。
はベンチに浅く腰かけ背もたれに頭を載せるような体勢で空を見上げると、天を指差した。

「あ、北斗七星」
「そんなの珍しくも何ともねぇだろ」
「なによー、ロマンの欠片もないわね。王道ストーリーでこういう状況の時は一緒に星を眺めるものでしょ?」
「…じゃあ一緒に星を眺めて、その後は?」
「うーんと…指差した先を頭をくっつけて2人一緒に見るとか、男の人が女の人をそっと抱き寄せるとか?」
「そう…」

そう言うと、の肩に手を回して抱き寄せる。

「――え、ちょっと…?」

突然の状況とアルコールのせいで頭がクラクラするような感覚を覚えるだが
肩に回された彼の手は力強くてびくともせず、その体勢から動けない。

「…男が女を抱き寄せて、それから?」
「それは……やっぱり…愛を語ったり…キ――」

キスと言い終わらないうちにが唇を重ねる。
は瞬きするのも忘れて呆然とキスを受け入れ、彼の唇が離れてからも固まった状態を続ける。

「………? お、おい……もしもし? さん、もしもーし!?」

そんな彼女の状態には顔を赤くして肩を前後に振った。

「――っ…ちょ、待って。気持ち悪くなる……」
「ああ、気がついたか」

激しく体を揺すられ、漸く意識を取り戻したはふぅ、とため息をつくと顔を上げた。
すると顔の赤いと目が合う。
そこでやっと冷静に戻り、は彼に食ってかかった。

「ちょっ…ちょっと何したの、今っ!?」
「…幼馴染が異性になる瞬間を俺的に提示してみた」
「何言ってんのよっバカ! ……こんな意識のさせ方…ないでしょ」
「これが一番手っ取り早いし、それに今日のお前…可愛いから……もう限界だった」

そう言っては両手でを抱き寄せる。
抱きしめられたは彼に可愛いと言われたことやらキスされたことやら抱きしめられていることやらで
頭の中がパンクしてしまったような状況になって、思考が停止していた。
それでもやけに心臓はバクバクと激しく動いている。

が好きだ……。もう何年もずっと片想いしてる」
…」
「俺じゃダメ…? 幼馴染は恋人にはなれないものなのか?」
「それは……」

彼の言葉ではずっと自分の中で抑えていた気持ちに漸く気づく。
を異性と意識してしまえば、幼馴染の時には当たり前だったこの隣の位置にもいられなくなるかもしれないという不安。
それがあった為に無意識のうちに彼を男とは思わないように生きてきた。

でも、今は彼の気持ちがとても嬉しい。
まだ自分は完全に彼に恋をしているとは言えないかもしれないけれど、
それでも今だったら彼との未来が想像できる。彼との幸せな恋愛が想像できる。

「…私がの気持ちに追いつくまで……ちょっとだけ、待ってて。
 ――多分すぐに追い越すと思うけど」

が笑顔でそう言うと、は嬉しそうに笑って彼女の額にキスをした。





 「…アップロード、完了っと」

2週間後、漸くリクエスト用の小説が書き終わり、はサイトを更新する。
するとコンコンとノックする音が聞こえた。

「おっ、今日も趣味に励んでんのか? 精が出るなぁ」
「まぁね。漸くリクエストにも応えられたことだし、早く更新したくて」
「そっか。頑張ったじゃん」

ニコッと笑い、を背後から抱き締めてパソコンの画面を見つめる。

「これでの幼馴染恐怖症も治ったわけか」
「恐怖症って」

そう言い、も笑う。

「でもホント、リクエストして良かったぜ。これがきっかけで長年耐え忍んだ恋が実ったんだからな」
「え? もしかしてこのリクエストって……」

は首を動かし彼を見つめると、はニヤっと笑ってそっとキスをする。

「…私、サイトのURL、教えてないよね?」
「お前がサイト構築の作業してる間、ちょろっと覗き見した時にサイトの名前覚えて、そんでもって小説検索サイトとかで検索してみた」
「もーなんなのぉっ! 見てるなら見てるって言ってよ、恥ずかしいじゃない」
「何言ってんだよ、いつも普通に小説は見せてくれるじゃん」
「それとこれとはまた別なのっ! サイトには後書きとか雑記とか好き勝手に書いてるし、そういう部分が恥ずかしいのよ」
「確かに付き合い始めた日の雑記は何か興奮してたな」
「ああもうっ見てたの!? ……うぅっ…悪かったわね!」

顔を真っ赤にして俯く彼女の姿を見ては笑いながら頭をぐりぐりと撫でた。
そんな彼をむぅと睨みつけながら顔を上げたは、ふと気になっていたことを思い出して問いかける。

「――それにしても、っていつから私のこと好きだったの? きっかけとかあった?」
「んー、お前の胸が膨らみ始めた時かな?」
「……最っ低」
「いや、男なんてそんなもんだって。
 それまでは何とも思ってなかったけど、体とか見た目が変わったら意識せざるを得ないって言うかさ」
「ふーん…」
「じゃあ、お前は?」
「私の場合は無理やり意識させられたんじゃないの」
「へへっ…」

少し照れながらの手を取る。
そんな彼の照れが伝染したようにも顔を赤くしながら立ち上がり、手を広げた彼の胸にゆっくりと顔を埋めた。






SSとは呼べないような長さになってしまい、申し訳ありませんっ!!!
今日、目が覚めた時、ふと「幼馴染いいなぁ…私も欲しかったなぁ」と思った為に
突発的に書いてしまいました(;´▽`A``
あまり幼馴染の情報が出てきませんが…少しでもキュンとしていただけたら幸いです^^;
でも私的には女友達とのやり取りが好きだったり。

というわけで、あとがきもあまり浮かばないくらい突然思い立って書いた話でしたが
読んでくださった皆様、ありがとうございました!!!


吉永裕 (2009.2.25)



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