√3a→大団円
彼女と出会い、彼女と一緒にいる時間が増えてから何故か男子生徒の知り合いも増えた。
いや、実のところ理由は分かっている。
皆、彼女に特別な感情を抱いているってことだ。
しかし、僕が現れるまでは彼女を友達としては意識しても異性として意識していなかった連中ばかり。
それぞれ片思いの相手がおり、彼女が恋愛相談相手だったなんて奴もいたらしい。
今頃慌てても遅いんだぞ、ということを知らしめてやりたかったが、まだ僕も彼女にとってはただの男友達の一人である。
彼女の存在の有難さに気づく人間がいるというのは喜ばしいことだけれど、
彼女に片思いをしている我が身としてはライバルは増えて欲しくないところだ。
そんな彼女は僕らの好意にはてんで気づかなくて、未だに僕以外の男どもは片思いを続けていると思い込んでいる。
そして陰ながら応援しているのだからその男らにとっては困った話だろう。
実際に彼女の幼馴染である若口は「ホントに思い込みが激しくて空回りする奴だ」と時々僕に愚痴を零すし、
宮間も「何か騙してるみたいで気が引ける」なんて言ってるし、青田は「そういう先生だから可愛いんじゃん」と開き直っている。
僕も「だったら直接好きだって言えばいいだろ」なんて強がってみたりするけど、
今まで僕が何度好きだと言ってみても冗談だと決めつけて流し続けている彼女を知っているから
奴らは同じ轍は踏みたくないと思っているらしい。
…というわけで、何だかんだでラスボスを同じくする僕らは仲良くなってしまった。
そもそも僕が彼女に外国のボードゲームが好きだという話をしていたのもあって、
僕が彼女を誘うと彼女が彼らを誘う流れとなり、結果として暇な週末に皆で遊ぶ習慣がついてしまったのだ。
そうしているうちに彼女抜きでも遊ぶことが増え、互いの彼女への気持ちを探り合う内に本音で話せるようになって今に至る。
「今日は何する?」
「今日はボードゲームじゃなくてTRPGなんてどうかな?」
「何それ?」
「テーブルトーク・アールピージー、またはテーブルトーク・ロールプレイングゲームっていうんだけど、
コンピュータを使わずにルールブックやダイスなんかの道具を使いながら
それぞれ作成したキャラクターになりきって会話形式で物語を進めていくゲームなんだ。
慣れるまで難しいかもしれないけど、慣れたら色んな遊び方ができて楽しいよ」
「へえ〜そんなゲームがあるんだ」
「TRPGのあるシナリオを一本化、簡略化してボードゲームにしたものもあるんだ。
この前遊んだあのゲーム、皆で話し合ったり協力して遊んだじゃない?あれがそうだよ。
TRPGは基本、基盤がなくて背景とか状況とかを想像力に任せることになるけど、プレイヤーの行動で物語が変わっていくんだ。
多分、お前たちなら好きだよ」
「楽しそうじゃん。やってみようぜ」
「うん、やり方教えてよ」
「じゃあ今日はこのゲームにしようかな」
彼女を含んだぎすぎすした関係は結局彼女によって丸くなった。
しかし、この恋は共闘中。
彼女の心に張り巡らされた分厚い壁を壊すのは誰か。
それはまだ、誰も分からない。
WEB拍手お礼画面に置いていたSSですが、気に入っていたので早めにこちらに持ってきました。
タイトルからおわかりの通り√3aの続き的な話です。
ドロドロした結末を予感させるものでしたが、もしかしたらヒロインさんは神がかり的な鈍さをもって
修羅場ENDを乗り切ったかもしれない、と思いまして。
フラグを折りまくった結果ですね。
こういう友達関係凄く好きなのです。リアルでは困りますが。
自己満足のSSですがここまで読んでくださいましてありがとうございました!!
どうぞこれからもR⇔R を宜しくお願い致します^^
吉永裕 (2014.2.22)
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