最終話 Le lieu de destin
は涙を流していた。
「…救えなくてごめんなさい」
サルサラを鎮める為に作った小さな墓の前では佇む。
そしてそっと屈むと白い花を供えて手を合わせて目を瞑った。
「…寒い。ここから出して、誰か――」
地下室でクリスタルに触れた時に身体の中に注ぎ込むように入ってきた言葉を思い出し、
目を開けたの頬にはいくつもの涙の筋が流れる。
「――私は…貴方を一時的に眠らせることしかできなかった…っ!!」
わぁっとは顔を覆って泣いた。
真織は暫くそんな彼女の様子を静かに見守り、頃合を見てそっと背後から優しく声をかける。
「…」
「…帰ろうか」
は顔を上げ、涙を拭って微笑んでみせる。
そして立ち上がると、2人はその場から静かに立ち去った。
その後、ジッカラートにはまた平和が訪れた。
神殿の周囲は再び閉鎖され、次第にサルサラへの恐怖心は人々の中から薄れていっているようだ。
「うわぁ、星が落ちてきそう」
「凄いねぇ…」
2人が口を開く度に、息は白く空へと舞う。
ジッカラートは夏が終わりそうだというのに、チャイラの山の上は冬のように気温が低かった。
しかし寒さを忘れて2人は地面に寝転がり、飽くこと無く空を見上げ続けている。
「あ、流れ星!」
「え、どこどこ?」
真織は空を指差した。は顔を近づける。
そんな行為が懐かしくなって、ふふっと彼女の口から笑いが漏れた。
「どうしたの?」
「何か、彗星を見た時を思い出して」
「あぁ、と一緒に見た彗星かぁ。あれも綺麗だったね」
そう言うと真織はに腕枕をする。
は彼の肩に頭を乗せて彼の横顔を見つめた。
「…あれから1ヶ月くらいしか経ってない筈なのに、もうずっと前のような感じがするよ」
「うん、私も…」
そっと真織は彼女の手を握る。
「これからもずっと傍にいてね、」
「勿論だよ。ずっと真織の傍にいるから」
そうして2人は満天の星空の下で愛を誓うように唇を重ねた。
と真織の物語はまだ始まったばかり――
−END−
やっと完結です!
長い間、読んでくださった皆様、本当にありがとうございました!!
真織や作品についてはあとがきでかいておりますので
興味のある方は是非あとがきにいらしてくださいね^^
吉永裕 (2006.5.17)
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