第15話 男たちの戦い



 静かに男たちは向かい合う。

「さぁ、君はボクをどう相手してくれるの?」
「…」

おちゃらけたサルサラとは対照的に冷静に敵を見据える真織。

「君、弱そうだねぇ。大丈夫?」

そう言うとサルサラは真織に向かってニコッと笑ってみせた。

が救いたい相手だからどんな人かと思ってたけど。

「――貴方は嫌な人ですね」

真織は数珠と札を握り締める。

「…ふ〜ん。君、陰陽師?巫女の男版?」
「そのようなものです」

冷静に振舞う真織に次第にサルサラの方が痺れを切らしてきたようだ。

「…つまんない、君。
 いつもそうやってイイコちゃんでいたわけ?」

サルサラの言ったひと言に真織は目を見開いた。

「…ふ〜ん。優等生な自分が嫌い?」

『シュッ』

札を投げられたサルサラの左頬にツーっと赤い筋が流れ落ちる。

「…貴方には関係ないでしょう」
「あはは!怖い怖い。なんだぁ、結構好戦的じゃない」

にやりと笑うとサルサラは右手で血を拭い、親指をペロリと舐めた。

「ただの分身の割にはリアルに作ってるでしょ? …生身を傷つける気分はどうだい?
 怨霊とかを相手にするのとは違って生きた反応がある分、気持ちいいでしょ」
「…そんな気持ちなんてわかりません。きっと、僕には永遠に」

そう言うと真織はサルサラを睨みつける。

「ふーん…。どこまでもイイコなんだね〜」
「いい子の何が悪いんですか。誰にも迷惑かけてないっ!!」

シュっと投げた彼の札をサルサラはさらりとかわす。

「…迷惑だね」

静かにサルサラは口を開いた。

「自分だけいい子でいれば何もかも丸く収まると思ってる。 …でもそんなヤツほど、他人に関しては無関心でしょ」
「…もしかして…貴方は、救われたかったんじゃ――」

真織のその言葉にサルサラは表情を変えた。

「――大嫌いだよ。救いって言葉」

今までのちゃらけた態度が一変し、冷たく指すような視線を真織に向ける。

「救いなんて幻想だ。所詮、誰も他人を助けようなんて思わない」
「貴方が知らないだけで、救いたいと思う人間もいるのに」
「偽善なんだよ。そんな人間は口だけさ。本当に人を救える奴なんて、いる筈がない」

言葉を発しながらサルサラの腕が次第に震えてくる。
何かに怯えているのか、溢れ出す怒りを抑えられないのか、左手で右手の震えを必死に押さえているようだ。

「――だからボクは救いだなんて言葉、信じない。
 愛も、信頼も、運命も全部っ――!!」

サルサラは右手を上げた。
そうして黒い邪気を大きな炎のように集めたかと思うと真織に向かってその炎を放った。

「…貴方は可哀想な人だ。何もかも信じられない程のことをされてきたから…。
 でも、だからといって――」

迫り来る黒い炎を前に、真織は五行を切る。

「人を怨みや怒りに任せて傷つけるのは許せないっ!」

真織の前に白く輝く水が現れた。
次の瞬間、その水が黒い炎に向かって放たれ、正面から炎を打ち消していく。
水は離れた所にいるサルサラをも飲み込み、彼を壁へと叩きつけ泡のように消えていった。

「…チッ」

脱臼か骨折でもしたのだろうか。サルサラの左腕がぶらりと垂れ下がる。
使い物にならなくなったその手を見て彼は舌打ちした。

巫女を取り込むために生かして利用するつもりだったが――

「――お前、殺すよ」

サルサラは静かに冷たく微笑んだ。










真織は礼儀正しいですね。
サルサラを貴方と呼び、敬語まで…。
優等生と呼ばれても仕方ないかも^^;

そう、大変申し訳ないですがまだまだサルサラとアゲハルートは再開できそうにありません。
本当にそのキャラって次の1話で終わりそうなんですもの…。
やはり終わりは揃えたいので…彼らを心待ちにしている方には本当に申し訳ありませんとしか…m(_ _)m

…というわけで、できるだけ早くこの『destin』を完結させたいと思っているので
もう少しの間、温かく見守ってください^^

それでは、ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございました!!


吉永裕 (2006.4.10)

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