「…

静かにサルサラが自分の名を呼んだ。

あぁ、この声。

は頭を上げて声のする方を向く。
サルサラは穏やかに微笑んでいた。

「おはよう」

そう言って彼が近づいてくる。

…この人を失いたくない。
独りにしたままにしておけない。

は祈るように思う。

「夢に魘されてたみたいだね。…でもそれも今夜で終わりさ」
「…そうだね」

そんな言葉の割りに、何故か嬉しそうな顔をしない彼を不思議に思いながらはベッドから降りた。

「こんな朝から来るなんて、今日は1日中、私に付き合ってくれるの?」
「そうだよ。まだ約束果たしてないからね」
「…星、見る約束?」
「うん」

ニコリと笑うサルサラを見ては心臓をギュッと掴まれたような痛みを感じる。
今日でおしまいなのだ。
サルサラとこのように会うことは。
明日、全てが終わる。

…私は巫女として結界を張ることもできずに。



 「晴れてよかったね」
「うん」

とサルサラはいつもの海辺にいた。
空には満天の星空が広がっている。
2人が着くまでは邪気で空は曇っていたが、サルサラが特殊な力を働かせてくれたのだろうか、一気に雲は流れていった。

。君は結局誰とも交わらず霊力を上げなかった。 …どうするつもり?」
「…」

昼間はずっと明るいいつもの調子だったのに、急にサルサラは静かに海を見ながら話をし始める。

「…明日、どうするの?ボクの所にも来ずに逃げ出す?もしくはボクに吸収されたい?
 それとも――」

そう言うとサルサラはの方を向き直った。

「――ボクの仲間になる?今からでもいいよ」

今までのサルサラからは考えられない真面目な表情には戸惑った。

どうしてそんなに真剣なの?
今の貴方の力だったら私の心も身体も乗っ取ることなんて簡単じゃない。
何で私にそんなこと聞くの?

は何も言えずに俯く。

「――なんて愚問だね。
 …仲間になんて…君は死んでもならないだろうし」

そう言ってサルサラは苦笑した。

「…サルサラは…復活したいんだよね」
「勿論だよ」

いつもなら強気でツンツンしている彼の言葉がどことなく丸く感じるのは何故だろう。

「もし私が仲間になるって言ったら…どうする?」
「――何だって!?」

おずおずと言った言葉に彼は驚きというよりも怒りに近い声を上げた。
はその理由がわからずにただただ、サルサラを見つめる。

「君は本当に自分の状況がわかってるの!?  明日、君がボクに近づけば確実に君は死ぬんだ!
 吸収されたら身体がなくなり、仲間になってもいずれは圧倒的な量の邪気に覆われて精神が侵され、死ぬようなものだ。
 なのに君は自ら死を選ぶって言うの!?
 第一、どうして君は強くなろうとしない!? ボクの言うことを素直に守って誰とも交わろうとしない……何でだ!?
 何で君は生きようとしない!? 自分の命は投げ出せるのに、何故っ身と心を汚そうとしないんだ!?」

グッと腕を掴まれたはサルサラの剣幕に押されて後ずさる。
彼女の瞳には薄っすらと涙が滲んでいた。

「何で…サルサラがそんなこと言うの…?私の力が欲しいんでしょ?」
「そりゃ欲しいけど、ボクが欲しいのはそんな死んだ魚同然の君じゃないっ!
 ボクが必要なのは笑ったり泣いたり怒ったり拗ねたりする理解しがたい心を持つ君なんだっ!!!
 ――クソッ……何でこんなに苛立つのか自分でもわかんないよ!
 でも君があまりにも馬鹿なことを言うから――」

そう言うとサルサラは一瞬固まって、彼女の腕をゆっくり放した。

「…私、この数日考えたよ。
 自分のこととか一族のこととか、…貴方のこととか」

は少し怯えながらも口を開く。

「…全部知ってるよ。サルサラが生まれてから封印されるまでのことまで」
「…黙ってよ、

サルサラは低い声で彼女の言葉を止めようとした。
しかしは口を動かし続ける。

「貴方の苦しみや悲しみ、憎しみも全部…私、感じたよ。 だから私、貴方をすく――」
「黙れっ!!」

彼女の言葉を遮り、サルサラは強引に唇を重ねた。
は咄嗟に身を引いて離れるが、再び腕を掴まれ押し付けられるようなキスをされる。

「…っ…ゃめ…」
「――っ…」

の涙の味にハッとするとサルサラは呆然とした様子で唇を解放した。

「…」

大きく開いたサルサラの瞳に自分が映っているのが見える。

「――っクソ!」

そう言うと彼はを放して背を向けた。

「…二度とボクには近づくな」
「サルサラ…?」

サルサラはから離れていく。

「いいかい、。明日は絶対来るんじゃない。 …もし来たら…その時は君を殺すから」
「待ってサルサラ、私――」

の言葉には振り向かず、サルサラはすぅっと消えていった。


「…何で今、穢さなかったの…?絶好の機会だったのに」

は砂浜に膝を落とす。

どうして?
私はサルサラに不要とされてしまったの…?
力がなさすぎたから…? 弱い心の持ち主だから?

「私は貴方を…」

救うこともできない。
仲間になることも拒絶された。
…私はどうしたらいいの?

はポカーンと胸に穴を開けられたような虚無感で呆然と涙を流し続ける。

傍にいたい。
サルサラと離れたくない。

そうしては朝日が昇る頃、やっとある考えに辿り着いた。


――自分はサルサラが好きなのだと。













この間、ちゃんと日数を計算してみたんですよ。
そしたらあと3日くらいあるだろうと思っていたらあと1日しかないことが判明し、焦りまくった私です。

さて、いきなりサルサラ様の行動が不審ですみません。
前日までツンケンしてたじゃーん、と思われた方。
以上のような日にちの思い違いが大きな原因かも。

ところで、やっと主人公に想いを自覚させました。
最後まで引っ張るつもりだったのですが、それも無理矢理かなぁ…と思って。

サルサラとはラブシーンらしいラブシーンがなくてすみません。
サルサラ好きな方がいらっしゃるようですが(VDアンケートより。)
そんな貴女の為に最後はラブラブさせたい…っ。
絶対サルサラルートではよくも悪くも絡ませますから(多分)。
エンドは今の所、Hエンド・Dエンド・Nエンド・Kエンドの4パターンくらい考え中。
英語は文字のイニシャルです。書いたら主人公のどの行動でどのルートになるか分かっちゃうかなーと思って。
でも、わかった方がいいですか…?

そういう方は反転してください→ハッピーエンド・堕落エンド・人形エンド・解放エンド。
まぁ、これを見てもどんな内容になるかはわからないかもしれませんが。
やはり純粋にサルサラと結ばれたい方はHエンドを一番最後に見るか、他の話は読まない方がいいかもしれません。
最初にHエンドを見てNエンドを見ると凹むかも…。(現在の脳内想像では、です)

…というわけで、実はサルサラが公式CPなんじゃねーのって感じの扱いですみません。


さぁ、ボチボチ決戦になりますが、果たして1話で終わるか、自分でもまだよくわかりません。
でもどれもベストな終わり方にしたいと思います。たとえそれがベタでも、無理矢理でも…っ!!
温かい目でどうか見守ってください。

それでは、ここまで読んでくださってありがとうございました!!


吉永裕 (2006.2.19)



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