最終話 Le lieu de destin
「――。堕落の味はどうだい?」
「…ふ……ぁ…」
静かな暗闇に響くの声と交わる音。
黒い闇に取り込まれ心を奪われた少女はそれでも微かに笑っていた。
心の底に僅かに残るサルサラへの想いは、その存在を主張するように疼き彼女の身体を火照らせる。
「……っ…」
「…。これからだよ。今から世界はボクらのモノになるんだ」
そうして2人の邪気は完全に混ざり合った。
「――やっと出れたよ」
砕けたクリスタルの散らばる地を踏みしめてサルサラは笑みを浮かべる。
「今からこの国はボクが支配する」
そう言うと彼は静かに手を差し出した。
「ボクと君だけの世界だよ。――おいで、」
「…はい、サルサラ様」
は復活した邪神の手を取り、2人は神殿の外へと歩いていった。
その後、ジッカラートは数日で闇に覆われた。
地上に魔物や怨霊が溢れ、人々を狂気が襲う。
破邪の力を持つ一族ですらそれに抗うことはできず、首都も魔物によって陥落した。
そうして邪神復活と一国が実質上滅びてしまったというニュースは世界各国一斉に報道され、
特殊な能力を持つ者たちが幾度となくジッカラートへやって来たが、封印前よりも更に力を増したサルサラの足元にも及ばず
ジッカラートは屍の集う邪の国として、完全に世界から隔離された。
「…何でだろうね、」
サルサラは肩に乗せられたの頭を撫でながら呟く。
「前は世界全てが滅びればいいと思ったけど、今はもうどうでもいいや」
「…」
は静かに彼の膝の上に手を置いた。
「このまま君と静かに暮らしていけたらって思うんだよ」
「…」
はゆっくりと頷く。
彼女からは生気が抜け、声も出せなくなっていた。
そんなの首筋にサルサラは顔を埋める。
「――。堕ちたのは…ボクの方、だったのかもしれないね」
そう言い、彼は彼女を抱き締める。
はそっとサルサラにもたれると微かに口を動かした。
……あ・い・し・て・る……
それはサルサラには永遠に届くことはないが、
その邪気に塗れた心から永久に消えることのない唯一のの言葉だった。
-END-
やっと完結です!
長い間、読んでくださった皆様、本当にありがとうございました!!
サルサラや作品についてはあとがきでかいておりますので
興味のある方は是非あとがきにいらしてくださいね^^
吉永裕 (2006.5.17)
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