――気がつくと、とうに彼女の年齢を追い越していました。
彼女と婚約した当時は、数年後に天変地異が起こるという予言によって一気にアーク国とバーン国の争いが激しくなった時期でした。
そんな時だからこそ、私はガーネットを守ろうと思い、求婚したのです。
私は城専属の占い師で王子の教育係でもある身。
その妻となれば、きっと職場での待遇も良くなるだろうし安全な所に住めるだろうと思ったのです。
賢い彼女は私のそんな卑怯な思惑に気づいていたのでしょう。
何度も求婚を断り続けました。
それでも諦めない私に、最終的に彼女が折れる形で婚約が決まったのです。
そんな彼女は昔から私よりも上にいました。
近所に住み、所謂幼馴染という関係の私たちでしたが、私よりも1歳年上の彼女がいつも姉代わりでした。
彼女はとても聡明で面倒見が良かったのですが、時に無邪気に笑ってみせたり可愛らしいいたずらをしてみたりする妹のような雰囲気も持った人で
皆から慕われていた人だったのです。
そんな彼女がまさかあんなにも早くに亡くなってしまうとは、誰が予想したでしょう。
私もその中の一人です。
婚約して半年後、仕事でバーン国に行く私を笑顔で送り出してくれた彼女が、
戻ってきた日には冷たくなっているなんて、想像もできませんでした。
彼女が流行病で魘されていた時、私はバーン国で人を呪っていたのです。
もしかすると神が私に罰を与えたのでしょうか。
それならば何故私を選ばなかったのでしょう。何故、何の罪もないガーネットを選んだのか。
私は彼女の最期にすら間に合わなかった無力な自分と、彼女にこんな運命を与えた神を恨みました。
その後、私は彼女の愛したこの国を守る為、更に争いへ加担していったのです。
しかし彼女が亡くなった数年後、その当時では考えもしなかったことが立て続けに起こりました。
戦争放棄、大災害の回避、国の統一。
――恐らく彼女がいたら花のような笑顔で喜んだことでしょう。
そうして漸く私は気づきました。
19歳になったばかりの彼女と2歳年の差があった私は、この大陸に平和が訪れた時には既に21歳になっていたということに。
私は今、彼女の死と師匠の病がきっかけで足を踏み入れた医学の道に進んでいます。
彼女のことはきっと永遠に忘れることはないでしょう。
不甲斐ない自分のことも、恐らくずっと悔やみ続けることになるでしょう。
それでも私は彼女の愛したこの大陸とここに住む者たちの為に、今を進んでいくつもりです。
「今の自分にできることを精一杯しよう」
毎年12月4日がくる度に、私はガーネットと似た雰囲気を持つ救世主がよく言っているこの言葉を思い出し、
彼女の分まで生きようと、再度、心に誓います。
12月4日はガーネットの誕生日であり、命日です。
(AHD3505年にアークバーン国で亡くなった英雄の手記より)
…という感じで、原作を知っている方ならピンとくると思いますが、シャルトリューの話でした。
WEB拍手お礼SSの為に書いていてページ数の都合上、没になった話です^^;
たまにはこういうキャラの背景などを描くのも楽しいです。
あ、英雄というのはアークバーン大陸を救った”アークバーンの勇者”として
こいつらが称えられているという前提での、こんなタイトルです^^;
分かりにくくてすみません。
なので、もし他の連中の手記を書く時も、没年が違うだけで他は英雄呼ばわりです。
まぁ、他の連中は書くこともないと思いますが。
というわけで、読んでくださったお客様、ありがとうございました!!!
吉永裕 (2009.2.18)
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