アークバーンの伝説 〜Story afterwards〜
+結婚記念日・エドワード編+
今日はとエドワードが結婚した日。
は幸せそうに写真を見つめる。
「これでお前の身も心も戸籍ですらも私のものだ」
結婚式の前夜、抱き締めながらそう言ったエドワード。
もしかしなくても彼はとても自分を愛しているらしいという事がわかった。
エドワードと結婚する前のは身寄りもない、戸籍も持たない為に申し訳なさを感じていた。
正体の知れないどこの馬の骨ともしれない女と息子が結婚するなんて、両親にしてみたらとても嫌な事に違いない、と思ったからだ。
しかし国の救世主として生きた伝説となっている彼女は心から歓迎され、
「息子を愛してくれてありがとう。優しいあの子に戻してくれてありがとう」とまで言われた。
…エドワードは妹さんを亡くしてから、全然笑わなくなったらしい。
「愛さなければ、失う悲しみなんてないのに」
彼はそう言って家を出て行ったそうだ。
妹さんの事や、亡くなった後の彼の事など、彼からは詳しく聞いていない。
時々、一緒にお墓参りに行くけれど静かに墓前にお花を供えて祈るくらいだ。
彼は祈りはしない。私の後ろで呆然と立って見守っているだけ。
それでも私が立ち上がって振り向くと、彼はとても寂しい目をしている。
その目を見るととても胸が痛む。
彼は一体今まで、どれくらい苦しんできたのだろうか。
その優しく深き愛ゆえに。
「ただいま」
「お帰りなさい!」
チャイムが鳴ったので慌てて玄関まで迎えに行くと、エドワードが鈴蘭の花束を差し出した。
「好きな花だろう?」
「うん!」
そう言っては花束を受け取る。
「もしかして5月に鈴蘭を贈るとその人に幸せを呼ぶってジンクス、知ってたの?」
「…あぁ」
少し間があったけれども、彼は穏やかな顔で頷いた。
何かを感じてそっとエドワードの袖を握る。
「ん、何だ?」
「…いや、特には何もないけど…」
お墓参りの時と同じような目、してた。 そう言おうとして、言葉が喉でつかえる。
エドワードが触れて欲しくないなら…私はそれでいい。
そんな事を思っていると唇にキスをされた。
「エド――」
「妹の好きだった花でもある。鈴蘭は」
そうしての持っている花に目をやる。
それは何だかとても懐かしそうで悲しそうに見えた。
「…私…傍にいるからさ」
ポロリと言葉を漏らす。
「だから来年の結婚記念日も、再来年の結婚記念日も、その次もそのまた次も、
ずっと鈴蘭の花束、贈って頂戴?
エドワードと私がずっとずっと幸せでいられるように」
「……そんなジンクス…」
そう言うと彼は泣くように笑った。
そしてギュっと妻の小さな身体を抱き締める。 も夫の背中に手を回した。
「…ね、エドワード」
――幸せになっていいんだよ。
そう言うと「馬鹿者」と耳もとで声がした。
「…私は幸せだ」
彼は呟くように言う。
「、お前がいるだけで私は幸せだ。
――ただ、サリィ…妹の事を忘れた日は1日もない。
何もできなかった自分の無力さが今でも私を苦しめる」
それでも、。お前に出会えた。
「妹の死んだあの日に封印した愛という感情を私に思い出させてくれた」
エドワードはそっとの頬を撫でる。
「…感謝している」
「感謝だなんて…」
私もエドワードに愛してもらってるもの。
沢山の愛をもらってるもの。
「今度、妹さんの事もっと聞いてもいい?」
「…あぁ。聞いてくれ」
――妹の死も、無力だったあの日の自分も受け止める時が来たようだ。
そう言ってエドワードはふっきれたように微笑んだ。
誰よりも愛を欲し、誰よりも愛の深いエドワード。
戸籍ですらも繋がっていたいと思うのは、貴方だけじゃない。
私も貴方を同じくらい愛してる。
「あ、せっかくの料理が冷めちゃうよ〜」
はエドワードの胸から顔を上げた。
「またおかしな創作料理ではないだろうな」
「違うもん!今日はちゃんと本を見て作ったから大丈夫よ!」
そう言って夫の手を引き、リビングへと向かう。
2人は幸せそうな笑顔を浮かべていた。
エドワードらしからぬ展開ですみません〜。
もっと激しくドキドキするようなモノをお望みだったのでは…(;´▽`A``
とりあえず、大切な人を亡くしたエドワードとカルトスとシャルトリューは
何らかの痛みを抱えている、という事を忘れないように書きました〜^^;
他の連中は書けていませんけども。
折角の結婚記念日なのに…すみません、本当に。
吉永裕 (2006.7.5)
2006.10.12から一般公開開始。
メニューに戻る