「…性格悪いし、いつも意地悪言うし、エッチだけど…嫌いになれない」
国を思うあまりアーク国に冷酷な所も、王や国民を大切にする所も、
勉強好きな所も、意外と優しい所も、全てエドワードという人間の中にある側面。
はそんな記憶の中のエドワードを思い出していた。
「……か?」
突然、後ろから透き通るような声が聞こえる。
懐かしさでキュンとする胸を押さえながら振り向くと、目の前には優しげな雰囲気の王子――レジェンスがいた。
「やはりそうか。こんな所で再会するとは思わなかった」
「うん。…ホントに久しぶりな感じがするね。 まだ2ヶ月くらいしか経ってないのに」
レジェンスもの隣に腰を下ろす。
「マジェスで手紙を受け取ったが幸せに暮らしているのか?」
「…うん」
脳裏にエドワードの姿が浮かぶ。
数ヶ月の間、喧嘩をしてばかりだったけれど…彼がいなかったら、きっと自分は今でもアーク国に戻りたいと思っていただろう。
「幸せだよ、私」
「そうか。そなたの笑顔を見る限り、そうなのだろう。
…それにしても、の家はこの辺なのか?」
「…ううん。住んでる所はバーン国」
「…そうなのか」
彼女の言葉にレジェンスの表情が曇っていく。
「レジェンスは…、バーン国と仲良くなりたいって思う?」
「…それは…」
「バーン国の新しい王様は苦しんでるよ。 アーク人を恨みながらも、民の為に彼も平和を望んでる」
「…では、が今いる場所というのは…」
「…うん、バーン国のお城だよ」
「――おい、何をしている」
「!?」
後ろからエドワードの声が聞こえた。
冷静沈着ないつもの声だ。
「エドワード…」
「…バーン国の宰相殿か」
「…レジェンス王子だな」
一瞬にして場の空気が固まり、2人は剣に手をかける。
「やめて!!」
は咄嗟にレジェンスを背中で庇った。
「…」
それを見たエドワードの眉間に深く皺が刻まれる。
「、私の元へ戻るのだ。皆もそなたの事を心配している。
私もそなたに傍にいて欲しい。そなたとは戦いたくない」
レジェンスは彼女の腕を掴む。
(私も…、ククルやシャルトリューさん、ランくんにもう一度会いたい。
レジェンスも私の事、必要としてくれてる。
エドワードよりずっと紳士だし、優しいし、一緒にいて苦しい思いなんてすることはない…)
レジェンスに少々強引に手を引かれ、とエドワードの間の距離が少し開いた。
(エドワード、止めないの?私がいなくなったら宝玉と交換できないんだよ…?)
何故か彼はの方を見ない。
(エドワードの馬鹿…って馬鹿は私か…。結局バーン国の役にも立てないで…)
エドワードがぼやけて霞んでいく。
(ホントに、エドワードの馬鹿…!最後の最後まで何も言わない気…!?
私の事、全然……必要じゃないの……?)
「…っ…」
文句を言いたいが喉が詰まって言葉が出ない。
しかし、その時――
「――行くな」
「!?」
(今…、何て言った?)
「…、行くな」
の足がピタリと止まる。
「…っエドワード!」
「!」
レジェンスの手を振り払い、はエドワードのもとへ駆けて行く。
「エドワード!」
手の届く位置までやってきた彼女は彼の胸に飛び込んだ。
(…好き。エドワードが好きだ、私)
の肩を左手で抱くと、エドワードはレジェンスの方を向く。
「…カルトス王からの伝言だ。我々も宝玉を4つ集めた。
明日の正午、ラスティア山の頂上で決着をつけよう、…以上だ」
「…わかった」
そう言い、レジェンスはマントを翻し去っていった。
「…馬鹿者が」
いつものような口調にどこか優しさを感じる。
「ごめん…」
エドワードの胸に顔を埋めているは涙を流しながらも自然と顔が笑顔になった。
「でも、どうして宝玉と私を交換しなかったの…?」
彼の顔を見上げる。
すると彼はすっと目を逸らした。
「…王に願い出たのだ」
「え…。もしかして……エド――」
(私の為…?)
「戻るぞ。王に報告する」
そうしてエドワードがの身体を離そうとした時、
「待って!…あともう少しだけ…このまま…」
自分の口からは咄嗟にそんな言葉が飛び出していた。
「…好きにしろ」
彼の言葉では再びエドワードの胸にもたれる。
エドワードからはいつものバラの香りがして何だかとてもホッとした。
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