―その後―
「これからどうする?」
たちはラスティア山の麓にいた。
「…海を…見に行かないか」
「うん」
そうして2人は海辺までやって来た。
「…綺麗。…よかった、生き返れて」
「そうか。それはよかった」
レノンは微笑む。
「…ずっと殿の別れ際の顔が目に焼きついて離れなかった」
「…」
「2度と失いたくない。この世に殿の代わりはいないのだ」
レノンはの頬にそっと触れる。
「…放してっていっても放さないからね」
彼の手に自分の手を重ねる。
「結婚して欲しい」「結婚して」
同時に同じ事を言い、2人とも目を丸くする。
「じゃあ、OKって事で」
「…ふっ」
レノンが笑い、も笑った。
そして浜辺には1つになったシルエットが夕日の下で長く伸びる。
「愛してる…」「愛している…」
再び同じ事を言い、2人は微笑み合った。
―3年後―
「レノンさん、それで5冊目だよ?もういいんじゃない?」
「いや、未知の事に対して万全な対策を練るためには、多様な情報が必要だ」
たちは本屋にいた。
レノンの腕には彼には似合わない育児の本、5冊。
「…名づけ辞典…」
「そんなの見なくてもいいでしょ、2人で考えようよ」
先日、が妊娠している事が判明したばかりだった。
警備隊、いわゆる警察官のレノンは未だに表情や話し方も硬いが、温かい雰囲気に包まれたとても良い夫である。
「あ、警備隊のお兄ちゃん!!」
そう言って絵本のコーナーからレノンを見つけた男の子がやって来た。
「この前は、一緒におうちを捜してくれてありがとう」
「これからは明るいうちに帰るようにな」
「うん!ママもね、ありがとうございましたって!! それじゃーね!」
そんな男の子の後姿を見て、レノンは優しく微笑む。
「レノンさんは男の子がいい?」
「…そうだな。一緒に馬に乗ったり、キャッチボールをしたりできたら、と思う」
「いいなぁ。私、子どもにヤキモチ焼いちゃうかも」
「な、何を言っている。 ――子どもはいつか手を離れるが、はずっと……一緒だ」
「えへへ。ありがと、レノンさん」
はレノンとそっくりな子どもが生まれて、家族3人、このまま幸せに暮らせますようにと祈りながら、今の幸せをかみ締めた。
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