―その後―


「で、カルトスは今何してるの?」

はカルトスに馬に乗せられ、ラスティア山から彼の家へと向かう。

「外交官をしている。これからは他の大陸とも交流をする時代になるからな」

風の音と馬の蹄の音で聞こえ難いが何とか聞きとれた。

「さぁ、着いたぞ」

そう言いカルトスは手綱を引き、馬を止める。
そしての腰を持ち、ふわりと馬から下ろすと家の鍵を開けて彼女をエスコートする。

「俺と、お前の家だ」
「え…?」

そう言うと、カルトスは机の引き出しから箱を取り出しその蓋を開ける。
そこには静かに光るシンプルな指輪があった。

「俺はもう王ではない。18歳のただの男だ」

カルトスはの手を握る。

「ずっと俺の傍にいて欲しい。…愛している」
「…私も…愛してる…」

驚きと嬉しさで目には涙が次々と溢れてくる。
そんな彼女の手を取り、カルトスはの左手の薬指に指輪をはめる。

「幸せになろう」
「…うん」

そして2人はしっかりと抱き合った。




 ―3年後―


『奥様!ベストカップル賞に選ばれた感想は!?』
『とても嬉しいです。彼の傍にいられる事が私の幸福ですから』

「ちょっと、カルトス!! チャンネル変えて!!」
「もう少し見よう」
「恥ずかしいってば!!」

とカルトスは、つい先日、この1年のベストカップル賞という賞に選ばれた。
若き外交官として活躍するカルトスと、常に彼の傍にいて支えるはアークバーン国内でも有名な夫婦だった。

「…ところで、。話があるのだ」
「何?」

カルトスが突然、真剣な表情になる。

「隣の大陸にあるジッカラート国に大使として行く事になった。約5年くらいの期間だ」
「うん…」
「ジッカラートはこの大陸とは何もかもが違う。文化も、宗教も、思想も、習慣も。
 ここ最近では、シオン=カドタという女性の国主になり、次第に開国してきたが今まで殆ど他国との交流はなかった地だ」

「…」
「俺は、その国とこの国とを繋ぐ架け橋になりたい。だが、情報もろくに入らない土地へを連れて行くのは不安だ」
「そんな!! 離れて暮らすなんて嫌!!」

はバンっとテーブルに手をつく。

「っふ…。ならそう言うと思っていた」

そう言ってカルトスは笑って彼女の髪を撫でた。
そして手を取り、じっと瞳を見つめる。

「ついて来てくれ、。お前は何があっても俺が守る」
「…うん。貴方の傍にいられるのが、私の幸せだもの。 どこにだって行くよ」

はカルトスの肩にもたれる。

「長期旅行だと思って楽しもうね!」
「そうだな」

そう言って微笑みあい、2人は指を絡ませた。
この人と一緒なら何があっても大丈夫、とは希望に胸を膨らませ、カルトスの傍にいる幸せをかみしめるのであった。



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