「エド」

カルトスが虹玉をエドワードに差し出す。

「これを」

レノンは朱玉を。

「どうぞ」

ヤンは黄玉を。

「どうぞ」

ランが蒼玉を。

「お使いください」

シャルトリューが紫玉を。

「…使えよ」

ククルが黒玉を。

「…これを」

そしてレジェンスがエドワードに銀玉を手渡す。

「…感謝致します」

そう言い、エドワードは７つの宝玉を台座に置き、緑玉を懐から取り出し最後の1つを台座に置いた。

「宝玉よ。　８つの封印を解き放ち、今ここに力を解放せよ」

エドワードが呪文を唱えると８つの宝玉は眩しい光を放ち、その光は太い柱となって空へ伸びていった。

「私の眠りを覚ましたのは誰だ」

光の柱の中に、背中に翼のある人間が現れる。

「…私だ」

エドワードが前に出る。

「封印が解かれるのは久しぶりだな。
　大陸が２つに割れ、争いが続く限り再び目覚める事はないかと思っていたが…。
　よくぞ、我の封印を解いた。１つ、願いを叶えてやろう」

その光の主はエドワードの前に降りて来た。

「さぁ、願いを言うがいい」
「…私の願いはただ1つ――」



（眩しい…。この感じは前に…。
　…そう、この感じはあの世界で私が初めて目を開けた時）


　…私は。
　でも、名前以外思い出せない。
　ここは一体どこだろう。
　見慣れない景色だ…。


今はしっかり覚えている。
あの世界に行く前の事も、あの世界での事も…。

（エドワード…）

は愛しい人の名を心の中で呼ぶ。

「…」
「…？」

の目の前に手が差し伸べられる。
よくわからないがその手を取り起き上がると、そこには少し大人になった青年たちと愛しいエドワードの顔があった。

「…私…、何で…？」
「宝玉の力で蘇らせた」
「宝玉の封印が解けたの？」
「…あぁ」

そうしてエドワードはこの２年間の出来事を簡単に話した。


が消えた後、カルトスとレジェンスは話し合い、８つの宝玉を交換する事にした。
バーン国の宝玉をアーク国へ、アーク国の宝玉をバーン国へ交換し、それが両国の和平の印とされた。
その後、彼らは自分の国に戻り、儀式上の和平を進めた。
そしてアーク国とバーン国は統合し、新しい１つの国、アークバーン国へと生まれ変わった。
国も生まれ変わり、彼らは国民にも相手へ憎しみを捨て、これからは協力し合おうと呼びかけた。
彼らの必死の努力の甲斐があり、少しずつ人々の心は変わっていった。

そして、運命の日。
和平と同時に人々に魔力の強さと確かさを伝えていった彼らを筆頭に、
国民１人１人の互いを思う祈りの力は光の壁となって大陸を包み込み、
大陸を飲み込むほどの大津波は大陸に何の被害も与えず去っていった。
そして全てが終わった今、暗黙の了解で宝玉を持った男たちは、自らの意思でラスティア山にやって来たのだ。


「…奇跡が…起こったんだ」
「…そうだ」
「よかった…。本当によかった…」

は安堵の涙を流す。

「だが…、本当に死んだ人間が蘇るとはな」

エドワードはプイッと顔を背ける。

「エド、素直に喜べ」
「そうだ。こうやって無事に逢えたというのに」
「…」
「…」

バツの悪そうなエドワードと目が合い、は何故か照れる。

「…帰るぞ」
「…う、うん」

はさっさと前を歩いて行ってしまうエドワードの後を足早に追いかけた。



次に進む　　　　　メニューに戻る