―その後―


「ここが…」

とシャルトリューはカムイの教会にある墓地に来ていた。

「はい。亡くなった私の婚約者、ガーネットの墓です」
「…そうですか」

そう言い、は花を供える。

「初めまして。です。…貴女の事はシャルトリューさんから聞きました」
「…」

シャルトリューはの後ろに立ち、静かに見つめる。

「私、シャルトリューさんが好きです。 でも、貴女から奪おうなんて思っていません」
「…?」

「貴女との思い出を大切にするシャルトリューさんだから私は彼が好きなんです。
 …だから、これからもシャルトリューさんを見守っていてくださいね」
「……」

シャルトリューはの思いに心を打たれる。

「…ガーネット。私は彼女を、を心から愛しています。
 貴女の事を忘れた日はありません。これからもきっとそうでしょう。
 ですが、 の事も貴女と同様、大切なのです」
「シャルトリューさん…」
「ですから、彼女と一緒になる事をどうか許してください」

その時、2人を温かい風が包み込んだ。

「貴女なら、祝福してくれると信じていました。…ありがとう」
「…ありがとうございます」

そうしてシャルトリューはの手を取る。

、私と結婚してくださいますか」
「喜んで…」

2人はガーネットの墓の前で永遠の愛を誓った。




 ―3年後―


「シャルトリューさん、バーグさんがいらっしゃいましたよ」

は診察室にシャルトリューを呼びに行く。

「もうそんな時間ですか。すぐに行きます」

そう言い、シャルトリューは聴診器を外し師匠の待つ居間へ向かう。

「すまないな、シャル。診察中だったのではないか?」
「いえ。丁度、患者が途切れた所ですし、約束していましたからね」

そう言ってシャルトリューは椅子に腰掛ける。
彼の前に座るバーグは5年前に比べるとずっと元気になっていた。
シャルトリューの研究の甲斐もあって2年前に新薬が開発され、
不治の病とされていたバーグの病が少しずつ改善されていったのである。

「どーぞ」

が2人に茶を出す。

「あぁ、さん。そんなに気を遣わずに。座っていてください」
「いえいえ。気になさらず」

はすっかりカムイの町の一員になっていた。
静かな町に響く彼女の明るい笑い声は町の人たちを元気にさせていた。

「これが2週間分の薬です。体力も随分回復してきたので成分を以前よりも軽いものにしています」
「ありがとう」

(占い師としてのシャルトリューさんも神秘的で素敵だけど、
 お医者さんの凛々しくて優しいシャルトリューさんはもっと素敵…)

医者の顔のシャルトリューには見惚れる。
結婚して3年経つが、2人は町一番のオシドリ夫婦として噂されるほど仲が良かった。

「ところで、もう子どもの名前は決めたのか?」
「え?」
「え?」

2人は唐突なバーグの言葉に驚く。

さんは子を宿しているだろう?」
「えぇ!? そうなんですか!?」
「あぁ。そういうオーラに包まれておる」
「…全く気づきませんでした。占い師としても、医者としても落第ですね…」

シャルトリューとは呆然としている。

「ははは。では、そろそろ帰るとするか」
「あ、すみません。何のお構いもせず…」
「いやいや。それでは失礼します」

そう言って笑顔でバーグは去っていった。

「…」
「…」

バーグが去った居間では2人は依然、呆然としていた。

「…子を宿してるだって」
「…そうですね…」
「…」
「…」
「…や、やった〜!!」「…う、嬉しいです…っ!」

やっと2人は実感が湧き、子どもを妊娠した喜びを噛み締める。

「これからは体調や日々の生活、あぁ!食事にも気をつけなければなりませんね」
「そうですね」

は珍しく興奮しているシャルトリューを見て嬉しそうに微笑んだ。

「…幸せです、私」
「…私もです。 、これからもよろしくお願いしますね」
「こちらこそ、よろしくお願いします」

そうして2人は優しく抱き締め合う。
シャルトリューの温もりを感じながらは幸せを実感するのだった。



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