―その後―
「どこに向かってるの?」
はレジェンスに馬に乗せられ、どこかへ向かっていた。
「…私の実家だ」
「実家?家族とは別に暮らしてるの?」
「あぁ。さすがに大統領と国防長官が同じ家に住むのは政治的に良くないと思ってな」
「え!? …じゃあ、元アーク国の王様が、今のアークバーン国の大統領で、レジェンスは王子から国防長官に…?」
「そうだ」
(って事は…今から私、この国の大統領に会うって事…?)
は気の遠くなる思いがした。
「…そなたを妻として紹介するつもりだ」
「え…」
「あの日から、私の時間は止まったままだ。周りがどんなに変わっても、
そなたのいない世界はどんなに味気なく、空しかった事か」
レジェンスは一旦、馬を止める。
「…を愛している。ずっと傍にいて欲しい」
「…私も…愛してる。ずっと貴方の傍に…いるから」
の目から涙が溢れる。
「…ありがとう」
2人はそっと唇を重ねた。
「着いたぞ」
暫くして着いた場所はとても豪華な屋敷だった。
「…」
は緊張で表情が硬くなる。
「、もっと気を緩めよ」
「う、うん…」
「――まぁ!! 本当に奇跡って起こりますのね!」
高くて可愛らしい声が聞こえ、中から華やかな雰囲気の少女が出てくる。
「初めまして。レイラと申します」
(妹さん!? 私と同い年くらいかな? 思ってたよりずっと気品ある人じゃない。
ククルたち、ちょっと大袈裟に言い過ぎ!)
「初めまして、です」
目の前の少女は嬉しそうに微笑む。
「お話は兄から聞いていますわ。ずっとお会いしたかったんです」
「幻滅したでしょ?」
「いえいえ!とんでもない」
「2人とも、中に入って話したらどうだ?」
「「はーい!」」
同時に応える2人は顔を見合わせて笑う。 どうやら仲良くなれそうだ。
「…全てうまく行ったようだな」
「はい」
たちを出迎えてくれたのは威厳溢れる優しそうな中年の男性だった。
「初めまして、と申します」
「初めまして。レジェンスの父のドルスです。 …本当に、生き返ってよかったですな」
「…皆さんのおかげです」
は微笑む。
「父上。昨日、話したように彼女と結婚しようと思う」
「好きにするが良い。この大陸の未来を変えた女性だ。 私には反対する理由などない。
…それに私は会って少ししか経っていないが彼女が好きになった」
ドルスは を見て微笑む。
「ありがとうございます」
そして はレジェンスの妻として迎えられた。
―3年後―
「お帰りなさい!」
「ただいま。留守中、何もなかったか?」
「うん」
国防長官として国の治安を維持する為に各地を自分の目で見て回り、
2週間ほど家を空けていたレジェンスが今日、戻ってきたのだ。
「独りにして済まなかったな」
「いいのよ。レイラが毎日会いに来てくれるから」
「あまり2人で遊び過ぎるなよ?」
「大丈夫よ。レイラったらね、これを食べたら胎児にいいとか、
音楽を聞かせた方がいいとか言っていろいろ持ってきてくれるの。私よりも熱が入ってるみたい」
そう言っては大きくなった自分のお腹を見つめる。
「噂好きなレイラらしいな。…それにしても、順調に育っているようで安心した」
「大丈夫よ。私とレジェンスの子どもだもん。 元気で強い子が生まれてくるわよ」
「に似てお転婆過ぎなければよいが」
「レジェンスに似て真面目過ぎなきゃいいけど」
そう言って2人は微笑む。
「貴方に似て優しくて気高い心を持つ子になりますように」
「そなたに似て未来を切り開く心の強さを持つ子になるように」
とレジェンスは優しく彼女のお腹を撫でる。
そんな時間を過ごしながらは心底、幸せだと実感するのだった。
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