―その後―


「ククル先生!こんにちは!!」

ユウはククルとザスパという町に来ていた。

「おう」

「さよーなら!!」
「気をつけて帰れよ」

そうして子どもたちは一礼して去っていく。

「先生?」
「あぁ。俺、武術の師範やってんだ。まぁその他にもボディーガードとか色々」
「へぇ、そうなんだ」
「…で、ここが俺の家」
「へー。独り暮らしにしては広くない?」
「今日からお前も暮らすから丁度いいだろ」
「え…?」

そう言うとククルが家の中から表札を持ってきた。

『ククル・イッキ&ユウ』

「…お前、こっちの世界に家族とかいないし、家もないだろ? だから俺が面倒見てやるよ」
「…えらそーに」

そう言いながらもユウは微笑みククルに抱きついた。




 ―3年後―


あれから3年が経ったけれど、未だにユウとククルは恋人同士である。
しかし最近、ククルの様子が変だ。
何かそわそわしているし、2人でいてもリラックスしていない。
もしや浮気!?とも思ったがユウ以外の女性には目もくれないのは変わらず…。
それでも最近彼が政府の要人のボディーガードの仕事に任命されたので、その仕事で疲れているのだろうと考えていた。

「ま、今日はそんな事忘れよっと」

そう言い、夕食の準備をする。今日はユウの誕生日なのだ。
勿論、本当の誕生日ではなく、ククルが決めてくれた誕生日だった。

「ただいま。…ん?今日は豪勢だな。何か記念日だったか?」

(…こいつ、忘れてやがる)

「…ククルが決めたんでしょ、今日が私の誕生日だって!!」

そう言うとククルはヤバイ、という顔をした。

「わ、わりぃ!すっかり忘れてたぜ。 プレゼントはお前の欲しいもん、買ってやるから許してくれっ!!」

ククルは顔の前に手を合わせてユウに謝る。
そこで待ってましたとばかりにある物を要求する事にした。

「じゃあ婚約指輪、頂戴」
「え?」
「すぐに結婚しろとは言わないけど、 もしククルにその気があるなら頂戴?
 私…、今の関係でも充分幸せだけどでも、もっと確かな絆が欲しいの」

そう言うとククルはふっと笑う。

「…やる」

そういってククルは胸ポケットから何かを取り出し、ユウの目の前に差し出す。

「…え…?これって…」
「婚約指輪だよ」

ククルが持っていたのはかつてリース村でユウが買った石を使った婚約指輪だった。

「…1週間くらい前からそれを渡そうと思ってたんだがな、お前…、ムードとか雰囲気とかそういうの大切にするだろ?
 だから、いつ渡せばいいかわかんなくってよ」

(…じゃあ、最近そわそわしてたのは…)

「その事ばかり気にしてたからお前の誕生日にまで気が回らなくって忘れちまったんだ。…すまねぇ」

「…もう、ククルったら」

ユウは笑ってククルの首に手を回す。

「そんなのにムードなんて関係ないわよ。もらっただけで凄い嬉しいんだから」
「…もっと早く言えっつーの」

彼の頬が少し赤い。

「素敵な誕生日プレゼント、ありがとね。ククル」
「…誕生日、おめでと。ユウ」

そしてククルはユウの薬指に婚約指輪をはめる。

「表札、変えなきゃな」
「…うん」

そうしてその夜からククルの家には『ククル・イッキ&ユウ・イッキ』という表札が飾られた。
ユウはククルと手を絡ませながらその表札を幸せそうに眺め、幸せを実感したのだった。


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