「シャル。これを使え」

レジェンスがシャルトリューに銀玉を差し出す。

「シャル、使えよ」

ククルが黒玉を。

「どうぞ」

ランが蒼玉を。

「…使え」

レノンは朱玉を。

「…どうぞ」

ヤンは黄玉を。

「…使うがいい」

エドワードが緑玉を。

「…使ってくれ」

そしてカルトスがシャルトリューに虹玉を手渡す。

「ありがとうございます」

そう言い、シャルトリューは７つの宝玉を台座に置き、懐から紫玉を取り出し最後の１つを台座に置く。

「宝玉よ。　８つの封印を解き放ち、今ここに力を解放せよ」

シャルトリューが呪文を唱えると８つの宝玉は眩しい光を放ち、その光は太い柱となって空へ伸びていった。

「私の眠りを覚ましたのは誰だ」

光の柱の中に、背中に翼のある人間が現れる。

「私です」

シャルトリューが前に出る。

「封印が解かれるのは久しぶりだな。
　大陸が２つに割れ、争いが続く限り再び目覚める事はないかと思っていたが…。
　よくぞ、我の封印を解いた。１つ、願いを叶えてやろう」

その光の主はシャルトリューの前に降りて来た。

「さぁ、願いを言うがいい」
「私の願いは――」



（眩しい…。この感じは前に…。
　…そう、この感じはあの世界で私が初めて目を開けた時）


　…私はユウ。
　でも、名前以外思い出せない。
　ここは一体どこだろう。
　見慣れない景色だ…。


今はしっかり覚えている。
あの世界に行く前の事も、あの世界での事も…。

（シャルトリューさん…）

ユウは愛しい人の名を心の中で呼ぶ。

「ユウ…」
「…この声は…シャルトリューさん…？」

ユウは呆然と起き上がると、そこには少し大人になった青年たちの笑顔と、大好きなシャルトリューの笑顔があった。

「…私…、生き返ったんですか…？」
「えぇ。宝玉の力です」
「じゃあ…、封印が解けたんですね？」
「そうです」

そうしてシャルトリューはこの２年間の出来事を簡単に話した。


ユウが消えた後、カルトスとレジェンスは話し合い、８つの宝玉を交換する事にした。
バーン国の宝玉をアーク国へ、アーク国の宝玉をバーン国へ交換し、それが両国の和平の印とされた。
その後、彼らは自分の国に戻り、儀式上の和平を進めた。
そしてアーク国とバーン国は統合し、新しい１つの国、アークバーン国へと生まれ変わったのだ。
国も生まれ変わり、彼らは国民にも相手へ憎しみを捨て、これからは協力し合おうと呼びかけた。
彼らの必死の努力の甲斐があり、少しずつ人々の心は変わっていった。

そして、運命の日。
和平と同時に人々に魔力の強さと確かさを伝えていった彼らを筆頭に、
国民１人１人の互いを思う祈りの力が光の壁となって大陸を包み込み、
大陸を飲み込むほどの大津波は大陸に何の被害も与えず去っていった。
そして全てが終わった今、暗黙の了解で宝玉を持った男たちは、自らの意思でラスティア山にやって来たのだ。


「…奇跡が…起こったんだ」
「そうです。奇跡は起こったのですよ」
「よかった…。本当によかった…」

ユウは安堵の涙を流す。

「…ユウ。　あぁ…泣かないで、貴女の顔をちゃんと見せてください」

シャルトリューが優しく彼女の涙を拭う。

「…では、私たちは先に帰るぞ」
「失礼する」
「ありがとうございました」

そうして彼らは自分の居場所へ帰っていく。

「…私たちも帰りましょうか」
「はい！」

そして２人は手を取り合い、山を下りた。



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