「…エドワード先生」
思わず出た言葉に驚く。
「第一、告白以前に、好きになっちゃいけない人だし…。
っていうかあんな意地悪でセクハラな先生、好きな筈ないっ!」
自分で自分に言い聞かせるように呟く。
…そうよ。
いつもいつも本の整理を手伝えとか、史料を取りに来いとか、人使い荒いし、
目が合うと「色気がない」とか「ガキ」とか言うし。
――それでも。
時々、先生が優しくしてくれたり、目が合ったりした時にドキッとするのは…本当の事で。
『コンコン』
は色々考えた挙句、エドワードの部屋のドアを叩いていた。
どうせ「暇人」とか嫌味を言われるだけだろうか、それでも顔が見たくなったのである。
すると気だるそうな表情で彼が出てきた。どうやら寛いでいた所を邪魔したらしい。
「…何だ、お前か」
「…はぁ、すみません」
初めて見る浴衣姿の彼の肌蹴た胸から目を逸らしながら謝るが、それから先の言葉が思いつかなかった。
「それで、何の用だ?」
「あ、あの…」
…さすがに貴方に会いに来ました、なんて言えない。
「ちょっと頭痛がするんで、シャルトリュー先生に薬をもらおうと思って」
よくもまぁ、こんな嘘がつけるなとは自分に呆れつつ彼の顔色を伺う。
「…シャルトリューの部屋は隣だ。しかしまだあいつは風呂に入っている筈だ」
「あ…そ、そうですか。…じゃあ――っ」
エドワードの顔も見たし、さっさと帰ろうと背中を向けると、すっと腕を掴まれ部屋に連れ込まれた。
「え、エドワードせんせ…い?」
パタリと目の前で閉められたドアを見ながらは呆然と呟く。
するとドアに手を突いてエドワードはニヤッと笑い、彼女の顔を覗き込んだ。
「シャルトリューが戻るまで俺の相手でもしろ」
「…あ…えっと…」
頭の上から響く彼の低い声にはドキドキを隠せない。
「でも…先生、仕事は…?」
「お前たちの就寝時間になるまではない」
そう言うと彼は身体を離し、さっさと奥へ行ってしまった。
「…」
は頭の中がパニック状態で固まる。
――こんな状況でどうやって普段通りに接しろって言うのよ?
教官の部屋に用もないのに生徒が入るなんて、他の教官に見つかったら自分だけではなく
エドワードにも罰が与えられる筈だとは奥の部屋を見ながら考える。
そんな罰を恐れながらも、迷っていた。
彼が奥にいる今ならドアを開けて逃げる事はできる。
…でも……私は――
「――」
突然名を呼ばれてビクリと身体が震えた。
窓の向こうにある月をバックにした彼の表情はいつもより冷静に見える。
静かにこちらを見つめるその瞳に引かれるように、はゆっくりと足を踏み出した。
「…頭痛はどうだ?」
目の前までやって来たにエドワードが声をかける。
それはいつもの嫌味な言い方ではなく、穏やかで優しかった。
――私、先生が…好き。
じわっと広がっていく昂揚感と胸を締め付けるような痛み。
どんなに意地悪でもいい。 どんなに嫌味言われたっていい。
私、エドワード先生が好き…。
堪えられない想いがポロリと涙になって溢れ出た。
そんな彼女の様子に気づいたエドワードが「大丈夫か」と一歩近づく。
「――私、嘘つきました」
は俯いたまま口を開いた。
「私、ここに来たのは薬をもらう為じゃなくて…先生に……会いたくて…」
喉が詰まりながら搾り出すように声を出す。
止められなくなった涙はボトボトと下へと落ちていった。
「――エドワード先生が好きだから……」
「――馬鹿者」
いつもよりもずっと優しい声でそう言うと、エドワードは穏やかに笑った。
「私を誰だと思っているのだ。…お前の考えている事など手に取るように分かる」
そうして彼の細長い指が涙をそっと拭が、それでも目からは涙が止まらず流れ続ける。
「…まったく…」
ふぅと呆れた表情を浮かべると、彼は包み込むようにを抱き締めた。
そうしてトントンと背中を軽く叩くように優しく撫でる。
「早く泣き止め、泣き虫が」
「何よ、意地悪!」
はいつものように口を尖らす。
すると彼はフッと笑った。
「そんなグジョグジョの顔にはしたくてもキスできないと言っているのだ」
「――っ!」
あまりの驚きに涙が止まってしまった。
そんな様子を見た彼はニヤッと笑うと額にキスを落とす。
「…せんせっ…!?」
恥ずかしさのあまり彼の胸を突き放そうとするが、逆にグイッと身体が密着する程に強く抱き締められる。
「あ、あの――」
「黙れ」
そう言うと彼の左手は頬に触れ、ゆっくりと親指で唇をなぞった。
「…」
まるで彼の視線に絡み取られたかのようには身体を固まらせる。
それでも頭の中は実に静かで、辺りはシーンと静まり返っていた。
そんな中、エドワードの綺麗な顔が近づいてきて額に軽くキスをされる。
――あ。何だ、おでこか。
とホッとしたのも束の間。
キスは額だけでなく、唇以外の瞼や耳や頬などにも落とされていく。
恥ずかしさで身体が熱くなっていくのを感じた。
それでも彼のキスは止まない。
「…先生、もぉ――っ」
このくらいで勘弁してください、と言おうとしたら彼の唇がの唇を塞いだ。
「っ…ぁ…」
息が止まるような長いキスだった。
「――まだだ。まだ足りない」
そして耳もとで「、お前が好きだ」と囁くように呟くと、彼は再び私の唇を喰らいそうな勢いで自分の唇を重ねる。
――先生がこんな激しさを持ってるなんて。
そうしては魅了の魔法にでもかかったかように、されるがままに彼のキスを受け続けた。
「おい、起きろ」
ある人物の声がしてはガバッと起き上がる。
「…えっと」
辺りをキョロキョロと見回した。 変わらない、いつもの部屋だった。
そんなを訝しそうに見る人物。
「まだ寝ぼけているようだな」
そう言うとエドワードはこちらに背を向けてドサッとベッドに腰を下ろす。
――夢…かぁ。
はぁ、とは顔を赤くして俯いた。
そりゃそうよね。
アーク国とバーン国の皆が仲良く同じ学院にいるんだもん。
そんな事、あるわけないし。
それに…シャルトリューさんは分かるにしても、エドワードが先生って…。
夢の内容を思い出し、尚更は恥ずかしさでいっぱいになり、エドワードの背中すら正視できない。
自分でも何であんな夢を見たのかさっぱりわからないが…
――それでも…。
「…余程いい夢を見たのだな。顔が緩んでいるぞ」
振り向いたエドワードは大人びた表情で微笑んだ。
「…うん。結構いい夢だった」
もはにかみながら答える。そんな彼女を見て彼はフッと笑った。
すると遠くから鐘の音が聞こえて来る。
その音で彼は宰相の顔に戻り
「では顔を洗って服を着替えろ。カルトス様が朝食を一緒にと仰っている」
そう言うと立ち上がった。
「あ、エドワード!」
は咄嗟に彼の手を掴む。
「…何だ?」
「あのさ…」
――今度、2人でどっか行かない?
極自然にそう言えた。
するとエドワードは「お前と違い、私は忙しいのだ」と背中を向ける。
そっか、そうよね。とは少し落ち込みながら彼の手を離す。
「――だが…」
ピクリとは肩を揺らした。
「――お前が私に予定を合わせるのなら、付き合ってやる」
そう言って振り向いた彼は表情は普段と変わらなかったけれど、それでもどこか少し照れているように見えた。
「うん」
は大きく頷く。
「誘う以上、私を楽しませてくれるのだろうな」
「それはわからないわよ」
――だって。
楽しむのはきっと、私の方だから。
そう言って微笑むを見て、エドワードは思わず眩しそうに目を細めた。
サイト1周年記念小説の割には、大した事なくて申し訳ありません…。
年齢的にエドは先生にしました。
めっちゃ私の好みの設定だ…。すみません、ホントに^^;
本当はもっとエロ路線で攻めようかと思ったのですが
他のメンバーとのバランスも考えてこんな感じです(;´▽`A``
で、最後は主人公さんがちょい攻で^^
たまには…素直にね、という事で。
それにしても宰相自ら起こしにきてくれるなんて…主人公さんの身分ってめっちゃ高〜。
…さてさて。それは置いといて。
ここまでサイトを続けてこれたのも皆様のお陰です^^
是非是非、今後もR⇔Rとアークバーンの伝説を宜しくお願い致しますm(_ _)m
吉永 裕(2006.11.3)
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