春宮はいつもと変わらぬが
王位継承により宮殿内は騒々しいと
女たちは目を輝かせ
美しい装束を身に纏う

不意にタキトゥスが現れて
女たちは美しく微笑むが
それには目もくれずに
化粧もしていない私の元へ

明るいうちに来るなんて珍しいと思ったら
彼は確固たる覚悟を決めていた

「身の回りを整理せよ。 今夜にはここを出る。
 お前の家に送り届けるから
 道案内を頼む」 なんて言い出すから
驚いて言葉も出ないではないですか

「私の全てを上に返してきた。
 これからは王族を外れ
 ただの人間として生きていく。
 私はと共に生きたいから」

 
私の為に離脱したのかと尋ねると
彼は優しく微笑み首を振る
自分は責任を果たしておらず
気概を持ち合わせていないと

それならばいいけれど
それでも私は泣いてしまう
私と出会わなければ 
いずれ王になっていたかもしれないのに

けれど それ以上の価値があると言ってくれた
彼の言葉が嬉しいのもまた事実で

「お前の存在に私は生かされてきた。
 お前に甘えるのもこれが最後だ。
 これからは必ず私が
 お前を守る存在になってみせる。

 働く力も乏しく何も持たない私を
 頼りなく思うこともあるだろう。
 けれどお前と共に生きる
 その日々の為なら私は身を粉にして働こう」

 
「“私が死んでも世界は変わらない”
 そう思っていた時がありました。
 けれど貴方は教えてくれた。
 私は私のままで生きてもいいと。

 不安な時や一人の時は
 必ず貴方が会いに来てくれた。
 今度は私が不安を除く番。
 ずっと一緒に生きていきましょう」


――王族離脱したタキトゥスはと結ばれ
マレに扱かれながらも
道場を切り盛りし
常に隣り合った幸せそうな二人が見られたという



サイト7周年に向けてゲームを作っていたのですが頓挫し、小説にしようと思って書き始めたが間に合わず、
尚且つ体調も崩して何も更新できないという事態に陥りそうになったのですが
「これだったらなんとか完結させられるかもしれない!」と思い立ち、慌てて脳内から言葉を振り絞りました。
相変わらず詳しい説明もないですが、この作品のテーマ的に説明文はナシだろうと思ったので
最後まで“ニュアンスで感じてください”とお客様に丸投げしてしまった駄目な私でありますm(__)m
しかしながら、最後まで見てくださってありがとうございました!

タキトゥスは大人のようで意外と子どもみたいな感じに仕上がってしまいました。
弟もいるし兄もいずれ結婚して子が生まれるだろうし、自分がいなくても王家はやっていけるなと思ったが最後、
あっさり捨てることのできる人です。
どうでもいい話ですが、この結末ではタキトゥスは婿養子に入ることになります。
というわけで、何を考えているのか分からないタキトゥスですが
最後にお師匠様に扱かれてる殿下可愛いと思ってくださった方がいらっしゃったら幸いです。

吉永裕(2012.11.3)


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