ウィオラ兄様の話を聞いた
陛下の命に背いた罰で
国外追放されるらしい
もうすぐ兄様はここを離れると

宮殿を抜け出し町で馬を借りる
師匠の元へ駆ける私の胸に
師匠の怒った顔が浮かぶ
これがきっと最後だろう

私はあの方がいなければもう二度と笑えない
たとえただの妹であろうとも

「二人揃って馬鹿な子たちだね。
 別の国でまともな生活ができると
 本当に思っているのかい?
 お前はきっと後悔する筈だ」

「いいえ、私は一緒に行きます。
 どんな生活が待っていようと
 兄様の傍にいたいのです。
 さようなら……お母様」


餞別に一番いい馬を貰い
私は再び駆け出した
たとえ間に合わなくても
私はこの国を捨てて行く

目の前に広がる土煙
兄様と武官が関所に向かっている
へばりそうな馬に鞭を打ち
私は彼に追い付いた

師匠の馬と彼の腕を離そうとしない私を見て
ウィオラ兄様は全てを悟った

「私はを不幸にする。いや、既にしてしまった。
 それでもついてくると言うのかね?
 私にはもう君に
 贈れる物は何もないというのに」

「貴方さえいてくれたら私は何もいりません。
 兄様に愛されて幸せでした。
 それが家族に向けるものであっても
 自分を誇らしく思える程に」


「“私が死んでも世界は変わらない。
 けれど生きることで何か
 変わる未来があるならば
 私はその未来の為に生きたい”

 君のその言葉が私と共にあるのなら
 死が二人を別つまで
 私は君を愛し続けると誓うよ。
 苦労をかけるがついてきて欲しい」



――そして故郷に別れを告げた二人は
新天地で苦労しながらも
手と手を取り合い
愛情に満ちた生活を送ったという




サイト7周年に向けてゲームを作っていたのですが頓挫し、小説にしようと思って書き始めたが間に合わず、
尚且つ体調も崩して何も更新できないという事態に陥りそうになったのですが
「これだったらなんとか完結させられるかもしれない!」と思い立ち、慌てて脳内から言葉を振り絞りました。
相変わらず詳しい説明もないですが、この作品のテーマ的に説明文はナシだろうと思ったので
最後まで“ニュアンスで感じてください”とお客様に丸投げしてしまった駄目な私でありますm(__)m
しかしながら、最後まで見てくださってありがとうございました!

ウィオラは愛の人なんですけど自分の恋愛には結構疎い人だったり。 自分の気持ちを押し付けない人です。
そのせいで少しヘタレ臭が漂うENDですが、私は結構気に入っていたりします。
若気の至りってやつだよなーとか追いかけるヒロインさん見てて思いますが。
それでもこの二人を微笑ましく思ってくださる方がいらっしゃったら幸いです。

吉永裕(2012.11.3)


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